原作は未読。
犯人探しモノかと思っていたけど、そういうんじゃなかった。
なかなか良き。
犯人探しモノのミステリーかと思って、しかも「どうせ容疑者の3人が同一人物で時系列がずれてるんでしょ?」と思ってたら全然違った。
テーマは「身近な人物を正しく疑うことができるのか?」
もしも自分の大事な人が殺人犯かもしれない、となった時に人はどうするのか。どうするべきなのか。
吉田修一の原作を映画化した「悪人」で国内外で高い評価を得た李相日監督が、再び吉田原作の小説を映画化した群像ミステリードラマ。名実ともに日本を代表する名優・渡辺謙を主演に、森山未來、松山ケンイチ、広瀬すず、綾野剛、宮崎あおい、妻夫木聡と日本映画界トップクラスの俳優たちが共演。犯人未逮捕の殺人事件から1年後、千葉、東京、沖縄という3つの場所に、それぞれ前歴不詳の男が現れたことから巻き起こるドラマを描いた。東京・八王子で起こった残忍な殺人事件。犯人は現場に「怒」という血文字を残し、顔を整形してどこかへ逃亡した。それから1年後、千葉の漁港で暮らす洋平と娘の愛子の前に田代という青年が現れ、東京で大手企業に勤める優馬は街で直人という青年と知り合い、親の事情で沖縄に転校してきた女子高生・泉は、無人島で田中という男と遭遇するが……。
引用:映画.com
東京と千葉と沖縄にそれぞれ「山神一也」と思われる怪しい男が現れる。
3人の男は身元不詳だったり偽名を使っていたりと明らかに怪しい。
犯人はこの中にいるのか?っていうのは映画のメインテーマでは無いんだけど、それでもやはり「こいつが山神(殺人犯)だったら・・・?」と、自分が愛した人を疑ってしまうことや、社会との関係性も捨てきれない事、などで悩んでしまうこと自体がとても大事。
最後まで緊張感がキープされていてよかった。
3つの舞台での話は最後まで交わることはなく、あくまで別々の人々の話で別々の暮らしの話。
3つの話がそれぞれ、別の重さを持っていて、映画を見た感想としてはとにかく重い。3倍重い。
沖縄に出ていた、辰也役の子、方言がめちゃめちゃうまいなと思ったら現地のオーディションで選ばれた新人だそうで、日焼けの感じとかもすごいリアルだし、演技もよかった。
これ、3人とも山神じゃなかった、というオチにも出来たはず。
皆、悪人ではなくてそれぞれ何か理由があっただけだった、というオチにも出来たはず。
それでもそうしなかったのは、作家の覚悟が見えてよかった。
結局ここにはほとんど触れられず。
原作はどうなんだろう。
でも、ここを変に描いて、よくありがちな「山神一也もかわいそうな男なんだよ」みたいな見せ方にしちゃうとこの映画の主軸はずれてしまうだろうし、ここでも作家の覚悟が見える。
左利きの件など辻褄が全くあってないし、ミステリーだとしたら失敗作。
そもそも、ミステリーっぽく見せる部分は必要ないと思うんだけどな。
少し勿体無い部分もあるけど、全体的には良き良き。