森博嗣「冷たい密室と博士たち」

森博嗣のS&Mシリーズの2作目。
「すべてがFになる (講談社文庫)」がとてもよかったのでこれも。
1作目に比べるとだいぶ”本格”。
メフィストっぽさ薄めです。

あらすじ

衆人環視の密室殺人者の手口は!?
低温度実験室の事件を推理する犀川助教授とお嬢様学生・萌絵
同僚の誘いで低温度実験室を訪ねた犀川(さいかわ)助教授とお嬢様学生の西之園萌絵(にしのそのもえ)。だがその夜、衆人環視かつ密室状態の実験室の中で、男女2名の大学院生が死体となって発見された。被害者は、そして犯人は、どうやって中に入ったのか!?人気の師弟コンビが事件を推理し真相に迫るが……。究極の森ミステリィ第2弾。
面白ければ良いんだ。面白ければ、無駄遣いではない。子供の砂遊びと同じだよ、面白くなかったら、誰が研究なんてするもんか。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

「すべてがFになる」に比べると正直結構見劣りします。
トリック、真相が前作に比べてだいぶ大人しめ。
というのもこの作品はフーダニット、ハウダニットがメインじゃなくてあくまでホワイダニットがメインなんでしょうね。

その動機の部分、犯人の動機には納得できるんですけど、増田の自殺の理由はちょっと理解できないし、なにより、珠子が丹羽の暴行を知っていたとも限らない(丹羽と結婚するということを考えると知らなかったのでは?)のみ被害者となってしまうのはさすがにひどいな、と思ってしまう。
珠子が暴行のことを知っているって確定した情報って書かれていたっけ?なかった気がする。

トリックに関しても、トリックのために作られたような建物でちょっと興ざめ。
「すべてがFになる」の場合は思い切り非現実的(メフィスト的)な設定だったので、そういうのも許せるんですけど、大学という日常に限りなく近い場所でこういうのはちょっと卑怯かな、と。

なんか否定的な感じになっちゃったけど、シリーズものとしては充分に面白いので次も読む。

執筆順が「すべてがFになる」と逆でこっちが最初に書かれたものだそうですが、犀川のキャラクターをより深く掘り下げているし、今作の方が2作目として向いていると思う。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」