伊坂幸太郎「残り全部バケーション」

心地よいリズム感。
魅力的な悪役。
軽妙な語り口。
綺麗な伏線回収。
と、非常に伊坂幸太郎らしい作品。

こういうのを読みたくて伊坂幸太郎を読む。

あらすじ

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。
引用:楽天ブックス

伊坂幸太郎はいつも、あらすじが最高。
もちろん個人の好みもありますが、とても惹きつける設定と引き込ませる書き出し。
“面白そうな”物語を書けるって素晴らしい才能だ。

感想

伊坂幸太郎の小説の語り口はいつもとても軽くて、気障ったらしい。
この文体を良しとするか悪しとするかはあくまで個人の好みでしょうが、僕は伊坂幸太郎の文体すごく好きです。

そして、この語り口によって不自然な箇所や散りばめられたヒントを隠していて、それが最後の謎解きのときに驚きを与えてくれてると思うんですよ。
だから伊坂幸太郎を読むときは素直に文体を楽しんで、キャラクターを愛して、どんでん返しにも油断しながら読むのがいいと思います。
それが一番伊坂幸太郎の世界を楽しめるはず。

ネタバレありの感想

時系列がバラバラな5つの短編。
きっと時系列順で読むとここまで楽しめないんじゃないかな。
そして、時系列のヒントの出し方が見事。PHSとかスマートフォンとか。

あくまで連作短編なので、一個づつの感想を言うのはやめておきますが、それでも一個だけ特に気に入ったシーン。
主人公である、溝口と岡田が、偶然出会った虐待を受ける子どものために、壮大で一見バカみたいな作戦をたてる「タキオン作戦」が最高に楽しい。
こういうの大好き。

ラストのメールは「早坂早希」なのか「岡田」なのか、それとも全く別の誰かなのか、答えは結局書かれてないんだけど、この物語にはハッピーエンドが似合う。というかハッピーエンドしか似合わない。
であれば、あのメールは「岡田」からなんじゃないか、と思います。

2017年 年間ベスト

  1. 村田沙耶香「殺人出産」
  2. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  3. ルイス・サッカー「穴」
  4. 梓崎優「叫びと祈り」
  5. 舞城王太郎「煙か土か食い物」
  6. 舞城王太郎「好き好き大好き超愛してる。」
  7. 柾木政宗「N0推理、NO探偵?」
  8. 城平京「虚構推理」
  9. 辻村深月「名前探しの放課後」
  10. 三島由紀夫「命売ります」
  11. 森博嗣「すべてがFになる」
  12. 米澤穂信「満願」
  13. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  14. 江戸川乱歩「江戸川乱歩名作選」
  15. 太宰治「人間失格」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 深水黎一郎「五声のリチェルカーレ」
  18. 麻耶雄嵩「貴族探偵」
  19. 朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」
  20. 喜国雅彦「本棚探偵の生還」
  21. 森博嗣「冷たい密室と博士たち」
  22. 西澤保彦「殺意の集う夜」
  23. 野村美月「文学少女と死にたがりの道化」
  24. 森絵都「宇宙のみなしご」
  25. 湊かなえ「山女日記」
  26. 霧舎巧「名探偵はもういない」
  27. 泡坂妻夫「湖底のまつり」
  28. 降田天「女王はかえらない」
  29. 森絵都「気分上々」
  30. 辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
  31. 野村美月「文学少女と飢え渇く幽霊」
  32. 辻村深月「光待つ場所へ」
  33. エドガー・アラン・ポー「黒猫」
  34. 歌野晶午「そして名探偵は生まれた」
  35. 法条遥「忘却のレーテ」
  36. 折原一「グランドマンション」
  37. 辻村深月「ロードムービー」
  38. 瀬尾まいこ「強運の持ち主」
  39. 志駕晃「スマホを落としただけなのに」
  40. 桐山徹也「愚者のスプーンは曲がる」
  41. 峰月皓「七人の王国」
  42. 湊かなえ「母性」
  43. 飯田譲治 梓河人「盗作」
  44. 伊坂幸太郎「残り全部バケーション」
  45. 折原一「遭難者」
  46. 折原一「螺旋館の殺人」
  47. 芦沢央「罪の余白」
  48. 井上夢人「魔法使いの弟子たち」
  49. ジェフリー アーチャー「百万ドルをとり返せ!」
  50. 伊坂幸太郎「首折り男のための協奏曲」
  51. 竹吉優輔「襲名犯」
  52. 湊かなえ「境遇」
  53. 長谷川夕「僕は君を殺せない」
  54. 早坂吝「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」
  55. 蘇部健一「六枚のとんかつ」