安心して読めるものが読みたくて、信頼の湊かなえ。
「告白」を超える事はなかなか無いんでしょうけど、それでもどれも安定して面白いですよね。
本書「境遇」はテレビドラマの原作として書かされた作品だそうです。
デビュー作の絵本『あおぞらリボン』がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。
共に幼いころ親に捨てられ児童養護施設で育った過去を持つ。
ある日、「真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。
「真実」とは一体何なのか。そして犯人は……。巻末に絵本『あおぞらリボン』(文・みなとかなえ 絵・すやまゆうか)を収録。
引用:Amazon
ミステリーじゃないです。
人間ドラマです。
テレビドラマとミステリーって相性よくないのかな?
一話見逃したらもうダメって思われそうだし、途中で真相がバレてもダメって思われそうだし、向いてなさそうな気もする。
ミステリーが読みたくて読んだからちょっとだけ残念。
もしも、ミステリー寄りにするのであれば、過去の事件をもっと最初から匂わせるべきなんだろうけど、人間ドラマが主軸なので前半は陽子と晴美の人間性や関係を描く事に集中していて、こういう割り切り方うまいな。
晴美が青いリボンを切って陽子の手首に結ぶシーンがすごく良くて、こういう優しさに比重を置いた作品も読んで見たくなりました。
テレビを意識してなのか、リボンの色の描写もしっかりとされていていいアクセントでした。
色の描写などを小説でするのかどうかって作家性が表れて面白い。
そこらへんはやっぱり芥川龍之介とか宮沢賢治とかはとても上手。
とにかく色鮮やかなイメージなんだよなぁ。
単発のテレビドラマという枠組みのせいもあるんでしょうけど、湊かなえにしてはやけに大人しい印象。
「告白」のような強烈さを求めると少々物足りないですが、やっぱり安心して読める作家の一人。