宿野かほる「ルビンの壺が割れた」

発売当時かなり話題になっていて、気になっていたものの、なんとなく怪しい匂いを感じて先延ばしにしていた。
ようやく読んだんですけど、やっぱりそんなに衝撃を受けるようなものではなかった。
文体も物量も軽く読みやすく、半日もかからず読了できるくらい。

賛否両論と言えば(問題作のようで)聞こえはいいですが、否ってほど特徴的でもないな、というのが正直な完走。

あらすじ

「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」──送信した相手は、かつての恋人。フェイスブックで偶然発見した女性は、大学の演劇部で出会い、二十八年前、結婚を約束した人だった。やがて二人の間でぎこちないやりとりがはじまるが、それは徐々に変容を見せ始め……。先の読めない展開、待ち受ける驚きのラスト。前代未聞の読書体験で話題を呼んだ、衝撃の問題作!
引用:出版社より

ネタバレありの感想

書簡体小説の体裁で、手紙ではなく、Facebookのメッセンジャーでのやりとり。
ですが、Facebookである必要性はとても薄く、舞台設定を活かせているとは言えない。

昔を振り返っていく、というのはよくある手法ですし、そこに不満はなにもありません。
ですが、昔を振り返るのにもかかわらず、綺麗に過去から時間軸で思い出話します?
一馬からも、未帆子からも、聞きたいこと、言いたいことがあるはずなのにそこには触れずにきちんと台本通りメッセージを送っていく。
こういう無理やり芝居させられている感じはよほど脚本が面白くないと、読んでいて不自然でしかなく感情移入ができない。
そもそも、未帆子が返信をした意味がわからない。
幼女殺人の犯人からメッセージ来たらブロックしません?ブロックが怖ければ、ほっておきません?
そこから、恋人自体の思い出話になっていき、最後にブチ切れるって、かなりおかしい行動ですよね。

オチも「予想も出来ないどんでん返し」と言いますが、あまりに急な一文でそりゃ予想できない(というよりは予想したくない)もの。
笑いの無いうすた京介さんみたいなもんですよ、こんなの。
SNSという舞台を活かすのであれば、ここからを本題にしていくべきですよね。

「2度読み必須」とかコピーで言われてますが、1度で充分です。

2021年 年間ベスト

  1. 辻村深月「琥珀の夏」
  2. 辻村深月「図書室で暮らしたい」
  3. 豊島ミホ「神田川デイズ」
  4. 周木律「伽藍堂の殺人 〜Banach-Tarski Paradox〜」
  5. 竹宮ゆゆこ「応えろ生きてる星」
  6. 最果タヒ「渦森今日子は宇宙に期待しない」
  7. 芦沢央「いつかの人質」
  8. 周木律「眼球堂の殺人 〜The Book〜」
  9. 周木律「鏡面堂の殺人 〜Theory of Relativity〜」
  10. 綾瀬まる「やがて海へと届く」
  11. 麻耶雄嵩「螢」
  12. 周木律「五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜」
  13. 周木律「大聖堂の殺人 〜The Books〜」
  14. 葵遼太「処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな」
  15. 塔山郁「人喰いの家」
  16. 浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」
  17. 石川宗生「半分世界」
  18. 周木律「双孔堂の殺人 〜Double Torus〜」
  19. 周防柳「余命二億円」
  20. 桜井美奈「塀の中の美容室」
  21. 周木律「教会堂の殺人 〜Game Theory〜」
  22. 清水カルマ「禁じられた遊び」
  23. 宿野かほる「ルビンの壺が割れた」
  24. 鳥飼否宇「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」
  25. 島田雅彦「預言者の名前」
  26. 星新一「天国からの道」
  27. 折原一「灰色の仮面」
  28. 大村あつし「エブリリトルシング」
  29. 倉井眉介「怪物の木こり」