辻村深月「琥珀の夏」

辻村深月さんの2年ぶりの長編小説。
積読を消化していかなければいけないのに、やっぱり買ってしまった。
辻村深月さんは僕にとってやっぱり特別な作家。

僕は辻村深月さんと同い年で、同じ年の時に同じニュースを見てきた。
本当にいろいろなニュースがあって、それはもちろん今もそうなんだけど、例えば地下鉄サリン事件の時に中学生だった人と高校生だった人、大人だった人では受けた影響はどうしたって変わってくる。
きっと、そう言った事や漫画が好きという趣味が似ていたりとかそういう諸々があり、辻村深月さんの小説はことごとく好き。

本作「琥珀の夏」はそんな辻村深月さんが宗教書く。
そりゃ期待してしまう。

あらすじ

大人になる途中で、私たちが取りこぼし、忘れてしまったものは、どうなるんだろうーー。封じられた時間のなかに取り残されたあの子は、どこへ行ってしまったんだろう。

かつてカルトと批判された〈ミライの学校〉の敷地から発見された子どもの白骨死体。弁護士の法子は、遺体が自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎをおぼえる。小学生の頃に参加した〈ミライの学校〉の夏合宿。そこには自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいて、学校ではうまくやれない法子も、合宿では「ずっと友達」と言ってくれる少女に出会えたのだった。もし、あの子が死んでいたのだとしたら……。
30年前の記憶の扉が開き、幼い日の友情と罪があふれだす。

圧巻の最終章に涙が込み上げる、辻村深月の新たなる代表作。
引用: 出版社より

ネタバレありの感想

最高。
まぁ、辻村深月さんの作品は全部好きなので、全部最高って言ってしまうんですけど。
そんな辻村深月さんの作品の中でも好きな方。
辻村ミステリーを期待しているとちょっと期待外れかもしれないけど、文学と文芸の間を漂うような小説で、この感覚は辻村深月さんの持つ特別な感覚だと思う。
新本格ミステリー作家としてデビューした彼女が社会問題を扱うというのもなんだか不思議で面白い。

カルト集団の敷地から白骨遺体が見つかるという、ショッキングな始まりにしてはその後、派手な展開は少ない。
どんでん返しもなければ、驚愕の真実も出てこない。
それでも、筆力の高さや人間描写のうまさもあって、次が気になる気になる。
ゆっくり読もうと思ったのにすぐに読了してしまった。

女性作家が描いた女性のための物語であって、男が読むと共感できる部分が女性に比べると減っているのは間違いない。
そこは寂しいけどそれでも十分に面白かった。

ノリコの子供の頃のエピソードなんかはとても生々しく、実体験なのでは?と思ってしまうくらいのリアルさ。
少女が少女時代にどういう感情だったのか、どういう思考回路だったのか。
そして友達とは。

素晴らしい一冊。
文庫が出たら再読します。

2021年 年間ベスト

  1. 辻村深月「琥珀の夏」
  2. 辻村深月「図書室で暮らしたい」
  3. 豊島ミホ「神田川デイズ」
  4. 周木律「伽藍堂の殺人 〜Banach-Tarski Paradox〜」
  5. 竹宮ゆゆこ「応えろ生きてる星」
  6. 最果タヒ「渦森今日子は宇宙に期待しない」
  7. 芦沢央「いつかの人質」
  8. 周木律「眼球堂の殺人 〜The Book〜」
  9. 周木律「鏡面堂の殺人 〜Theory of Relativity〜」
  10. 綾瀬まる「やがて海へと届く」
  11. 麻耶雄嵩「螢」
  12. 周木律「五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜」
  13. 周木律「大聖堂の殺人 〜The Books〜」
  14. 葵遼太「処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな」
  15. 塔山郁「人喰いの家」
  16. 浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」
  17. 石川宗生「半分世界」
  18. 周木律「双孔堂の殺人 〜Double Torus〜」
  19. 周防柳「余命二億円」
  20. 桜井美奈「塀の中の美容室」
  21. 周木律「教会堂の殺人 〜Game Theory〜」
  22. 清水カルマ「禁じられた遊び」
  23. 鳥飼否宇「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」
  24. 島田雅彦「預言者の名前」
  25. 星新一「天国からの道」
  26. 折原一「灰色の仮面」
  27. 大村あつし「エブリリトルシング」
  28. 倉井眉介「怪物の木こり」