麻耶雄嵩「螢」

嵐の山荘もの。しかも曰く付き。
それだけで評価は高い。
この舞台設定だけでテンション上がりますが、読みやすさもあってそのテンションのまま読了。

あからさまに怪しい部屋や、思わせぶりなセリフなど、とても王道なミステリな雰囲気が最高。

あらすじ

オカルトスポット探険サークルの学生六人は京都山間部の黒いレンガ屋敷ファイアフライ館に肝試しに来た。ここは十年前、作曲家の加賀螢司が演奏家六人を殺した場所だ。そして半年前、一人の女子メンバーが未逮捕の殺人鬼ジョージに惨殺されている。そんな中での四日間の合宿。ふざけ合う仲間たち。嵐の山荘での第一の殺人は、すぐに起こった。
引用: BOOKデータベース

ネタバレありの感想

本書「螢」には探偵役が2人。
その2人が内部犯説と外部犯説をぶつけるというの構図、すごく良いですね。
途中いくつか違和感を覚えた箇所もあったはずですが、大きなトリックは全然気づけませんでした。
そういうのを考えるよりも先を読みたくなるというか、物語自体を楽しんでいたくなった。

大きなトリックは叙述トリックが2つ。
語り手が諫早ではなく長崎だったという視点誤認。
もう一つは松浦の性別誤認。
この性別誤認がいい。
読者は松浦を女性であることはわかっているのだが、登場人物のほとんどが松浦を男性だと認識しているという、通常の叙述トリックとは逆の構図。
しかも思い返すとヒントはたくさん散りばめられている。
見事。

叙述トリックは読者に驚きを与えるためだけに用意されているものもありますが、本書ではこの性別誤認トリックが真相にもつながっていく感じが小説としての爽快感を与えてくれる。

王道な雰囲気のミステリでありながら叙述トリックが2つという豪華で邪道なミステリ。
大好き。

2021年 年間ベスト

  1. 辻村深月「琥珀の夏」
  2. 辻村深月「図書室で暮らしたい」
  3. 豊島ミホ「神田川デイズ」
  4. 周木律「伽藍堂の殺人 〜Banach-Tarski Paradox〜」
  5. 竹宮ゆゆこ「応えろ生きてる星」
  6. 最果タヒ「渦森今日子は宇宙に期待しない」
  7. 芦沢央「いつかの人質」
  8. 周木律「眼球堂の殺人 〜The Book〜」
  9. 周木律「鏡面堂の殺人 〜Theory of Relativity〜」
  10. 綾瀬まる「やがて海へと届く」
  11. 麻耶雄嵩「螢」
  12. 周木律「五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜」
  13. 周木律「大聖堂の殺人 〜The Books〜」
  14. 葵遼太「処女のまま死ぬやつなんていない、みんな世の中にやられちまうからな」
  15. 塔山郁「人喰いの家」
  16. 浅倉秋成「六人の嘘つきな大学生」
  17. 石川宗生「半分世界」
  18. 周木律「双孔堂の殺人 〜Double Torus〜」
  19. 周防柳「余命二億円」
  20. 桜井美奈「塀の中の美容室」
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  22. 清水カルマ「禁じられた遊び」
  23. 鳥飼否宇「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」
  24. 島田雅彦「預言者の名前」
  25. 星新一「天国からの道」
  26. 折原一「灰色の仮面」
  27. 大村あつし「エブリリトルシング」
  28. 倉井眉介「怪物の木こり」