石川宗生「半分世界」

普段、SFを読まない僕ですが、本作収録の「吉田同名」。
何かしらの媒体でタイトルをあらすじを知っていてちょっと気になっていた本が文庫になったので購入し割とすぐ読了していた。

本書は4編の短編集で、それぞれ、それなりに読み応えはあり。
1編目の「吉田同名」は創元SF短編賞を受賞。
多分そのニュースか何かを見たんだろうな。

あらすじ

3年前、会社から帰宅途中の吉田大輔氏は、最寄り駅から自宅までの間で一瞬にして19329人となったーー第7回創元SF短編賞を受賞した表題作をはじめ、まっぷたつになった家で暮らし続ける一家とその観察に没頭する人々を描く「半分世界」、町じゅうが白と黒のチームに分かれ、何百年もの間“試合”を続ける町を舞台にした「白黒ダービー小史」など4編を収録。第39回日本SF大賞候補となった衝撃のデビュー作、ついに文庫化。
引用:出版社より

ネタバレありの感想

読みたかった「吉田同名」。
なんとなくこういうものを読むと(自分にSFの素養がないせいで)筒井康隆さんを思い出す。
SFが苦手な僕でも筒井康隆さんは大好きな作家の一人で、奇抜な設定とぶっ飛んではいるもののリアルなキャラクター、フィクションならではのストーリー展開、小説という媒体ならではの構築などなど、本当に素晴らしい才能と実力と審美眼を持った作家さんだと思う。
そしてそんな筒井康隆さんを思い出してしまうものの、「吉田同名」はというと、やはり展開は落ち着き気味、描写は物足りないのに冗長に感じてしまう部分もありつつ残念。
世間的な評判はやはり高い作品であるので、これはあくまでも僕がSFに対する素養のなさが原因であると思います。

ということで、あまり期待せずに2編目以降を読んだわけですが、ここからが面白くなった。
表題作の「半分世界」も突飛な設定ながらうまくメタフィクション的な視点を交えつつの名短編。
「白黒ダービー少史」、「バス停夜想曲、あるいはロッタリー999」もなかなかよく結局全体としては満足いく一冊でした。
良き良き。

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