芦沢央「いつかの人質」

やっぱり好きだな、芦沢央さん。
今まで読んだものも、どれも面白くて、期待して読むんだけど、それでも読んだ後いつも読んでよかった、楽しかった。って思える。
きっと、僕にとってまず文体がすんなり入ってくるんですよね。
大きくひっかかる部分があるわけじゃないんだけど、スッと飲み込める文体とテンポ。
そして、キャラクター描写と、(ミステリに限らず)トリックが良き。
そんなわけで本作「いつかの人質」もとてもよかった。

あらすじ

宮下愛子は幼いころ、ショッピングモールで母親が目を離したわずかなすきに連れ去られる。それは偶発的に起きた事件だったが、両親の元に戻ってきた愛子は失明していた。12年後、彼女は再び何者かによって誘拐される。一体誰が? 何の目的で? 一方、人気漫画家の江間礼遠は突然失踪した妻、優奈の行方を必死に探していた。優奈は12年前に起きた事件の加害者の娘だった。長い歳月を経て再び起きた、「被害者」と「加害者」の事件。偶然か、それとも二度目の誘拐に優奈は関わっているのか。急展開する圧巻のラスト35P! 文庫化に当たり、単行本から改稿されたシーンも。大注目作家のサスペンス・ミステリー。(解説:瀧井朝世)
引用:出版社より

ネタバレありの感想

3歳の時に誘拐された少女は12年後再び誘拐されてしまう。
こんなに興味をそそる設定なかなかない。
これはフィクションで1冊の本なので当然、その2つの誘拐は何かの関係があるだろうとは思って読む。

物語は3歳の宮下愛子が意図せず誘拐されてしまう場面から始まる。
その誘拐事件は意図したものではなく、事故のようなもので、さらに不幸な事故は重なり、宮下愛子は失明してしまう。
物語の本筋は2度目の誘拐。こちらは犯人も動機も不明。

12年前、母親が愛子を意図せずとも誘拐してしまった江間優奈。
優奈は夫に浮気と借金を告白し、失踪してしまう。
そして、再度誘拐される愛子。
当然、この2つの事件には関連性があると想像して読み進めていくわけですが、どうにも繋がりが見えそうで見えない。
しかし、登場人物は少ないため、メタ的な視点からだと犯人はなんとなく想像がついてしまう。
それでも動機(ホワイダニット)が全然わからない。

犯人は自信無いながらも想像通り優奈の夫。
「嫁を容疑者にして警察に探してもらうため」という動機には結構驚かされた。

良き良き。
楽しい1冊でした。

2021年 年間ベスト

  1. 辻村深月「図書室で暮らしたい」
  2. 周木律「伽藍堂の殺人 〜Banach-Tarski Paradox〜」
  3. 竹宮ゆゆこ「応えろ生きてる星」
  4. 芦沢央「いつかの人質」
  5. 周木律「眼球堂の殺人 〜The Book〜」
  6. 周木律「鏡面堂の殺人 〜Theory of Relativity〜」
  7. 綾瀬まる「やがて海へと届く」
  8. 周木律「五覚堂の殺人 〜Burning Ship〜」
  9. 周木律「大聖堂の殺人 〜The Books〜」
  10. 塔山郁「人喰いの家」
  11. 周木律「双孔堂の殺人 〜Double Torus〜」
  12. 周防柳「余命二億円」
  13. 周木律「教会堂の殺人 〜Game Theory〜」
  14. 鳥飼否宇「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」
  15. 島田雅彦「預言者の名前」
  16. 星新一「天国からの道」
  17. 折原一「灰色の仮面」
  18. 大村あつし「エブリリトルシング」