“堂”シリーズの3作目。
前作で初登場し、脇役だった宮司百合子が狂言回しとして登場。
遺産相続のゴタゴタに巻き込まれる、という今作もとてもミステリーしていて良き。
本作は1作目ぶりのクローズドサークル。
その作り方が「遺言に書かれたルール」という無理やりなやり方で最高。
メフィスト賞受賞シリーズ第三弾! 有り得ぬ館と哲学者の遺言とが惨劇を呼ぶ。放浪の数学者、十和田只人は美しき天才、善知鳥神に導かれ第三の館へ。そこで見せられたものは起きたばかりの事件の映像ーーそれは五覚堂に閉じ込められた哲学者、志田幾郎の一族と警察庁キャリア、宮司司の妹、百合子を襲う連続密室殺人だった。「既に起きた」事件に十和田はどう挑むのか。館&理系ミステリ第三弾!
引用:出版社より
善知鳥神が最初から出ていてこれまでの本シリーズとは雰囲気が違う。
善知鳥神に連れられた十和田が見せられる映像は過去のものということで、見せ方も変えていてシリーズでの中弛みをしないような工夫が見えてくる。
現実的ではないのはもちろんなんだけど、それでもやはり「遺言のルール」だからと誰も外に出さない、という無理やりクローズドサークルを作るという展開は言葉悪くなってしまうが、ほとんどバカミスのようで楽しい。
善知鳥神から最初にヒントとして五覚堂は「回転」する。と。
そこまでヒントがあっても、建物自体が回転して・・・というのはさすがにスケールが大きすぎて思いつかなかった。
本シリーズの醍醐味はこういうところ。
フィクションならではの仕掛け、フィクションならではの展開。
正直すっきり納得行くような解決ではないけど、それでもやっぱりここまで大きなものを読ませてもらえるのはすごくありがたい。
やっぱり大好きなシリーズだな。
密室トリックでスポンジを使ったのはさすがにわかりやすすぎる。
というか、本シリーズは細かい部分のトリックはどうでも良いのかもしれない。
あくまで、何が回転するのか?というところがメインなんだろう。
ただ、シリーズものとしての弱点もすごい出てしまっている一冊。
本書だけ読んでしまった、本書から読んでしまった人はわけがわからないだろうし、気持ちも全然入らないだろう。
ファンの方ばかりみてしまった一冊。
シリーズものとしての宿命かもしれない。
司と百合子の関係性が見えてきてシリーズもの、キャラクターものとして面白くなってくる。