島田雅彦「預言者の名前」

島田雅彦さんの宗教もの。
しかもアンチ宗教小説、との事。大きなテーマだが、本書は(物理的に)薄い。
しかもさすがの島田雅彦さん。話がいろいろなところに飛んでいるのに読みやすさは失われていない。

あらすじ

今こそ新しい預言者があらわれる時だー。ある時は銀行員、ある時はアステカの神官の子孫。神出鬼没、正体不明の“神の代理人”謎の預言者ムルカシを探せ!元カソリックの信者で後に娼婦となったマリ子と、聖書と『ガンジー自伝』を愛読する天才的平和主義者の日本人ワタルが、ムルカシを追って都市を彷徨い、聖地を巡礼する。永遠の悟りを求めた魂の遍歴を綴るアンチ宗教小説。
引用:「BOOK」データベース

ネタバレありの感想

僕自身は無宗教なんだけど、宗教観のようなものは持っていたいと思っている。
高校時代は(なんとなく)プロテスタント系の学校に通っていたんだけど、そこには牧師さんがいて、牧師さんが授業で「自分は神様がいると、完全に信じているわけではない。だけど、神様がいつも自分を見ている、と思って行動している」と言っていて、それは僕にとって大きな影響を与えた言葉だった。
そんな宗教観につけ込み、私利私欲や悪意をもって誰かを騙したり、傷つけたりすることはとても良くないことだと思っている。

そんな考えもありつつ、何かを盲目的に信じてしまう人の感情や思考、人をうまく騙す詐欺師の思考や方法論なんかにもとても興味があるのも確か。
だからフィクションで宗教に触れたいんだと思う。

さて、本書「預言者の名前」ですが、期待していたようなものではなかった。
「アンチ宗教小説」と言われて「そんなことないだろう」と言えるわけではもちろんないのですが、簡単に「アンチ宗教小説」と言い切れる本ではないのも確か。
本書を読んで宗教に興味を持つ人も多くいると思う。
エンタメ小説のような側面もありつつ、純文学的な匂いもうっすらと感じる。
3大宗教を否定しているようでいて、否定しきれていない印象も受けてしまう。
それは、読んだ人それぞれの宗教観によるんだと思う。

ラストを読んであの有名な作品を思い出すのは僕だけじゃないと思う。
ちょっとそこは残念だったかな。

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