竹宮ゆゆこ「応えろ生きてる星」

確実に大好きな作家のうちの一人である竹宮ゆゆこさん。
ライトノベル出身ということで、(ライトノベルにあまり触れていない人にとっては)異常なほどのハイテンションだったり軽妙(すぎる)文体が苦手な人もいるでしょう。
そういう僕も、ライトノベルに属される小説はどちらかというと苦手なものが多いんですけど、それでも竹宮ゆゆこさんの作品はそれこそ「とらドラ!」のころから大好きでした。
「とらドラ!」のころから大好きだったんだけど、最近は新しい作品を読むたびにどんどんと好きになっていく。

あらすじ

結婚直前の会社員・廉次の前に現れた女は、突然のキスと、謎の言葉を残して消える。直後に、婚約者に目の前で別の男と駆け落ちをされた廉次は謎の女と再会。婚約者の行方をある手段で探し出そうとする。奪われて、失った、その先にあるものはー。過去と向き合い、抱え続けた痛みからの再生を描く書き下ろし長篇小説。
引用:「BOOK」データベース

ネタバレありの感想

いきなり悪く言ってしまえばいつも通り。
いつも通り主人公が失敗して、傷ついて、おかしなキャラクターが救ってくれる。
そんな話。
竹宮ゆゆこさんの作品を読むときはこんな物語を期待してしまっていることもあるせいか、この起承転結がとてつもなく気持ちよく、爽快だ。

大きな枠組みで言うと、朔の正体(恋人を奪った男の恋人)や結末に大きな驚きがあるわけではない。
しかし、僕が小説を読むときに求めているものは決して「大どんでん返し」だけなわけではない。
もちろん、僕はミステリーが好きなので「大どんでん返し」は好物ではある。
それでも、素晴らしい情景描写や力ある一節、愛おしいキャラクターやなんとなくの笑い。そんないろいろなものを小説や、物語といってフィクションに求めている。
そういう点で本書「応えろ生きてる星」は朔の奇天烈でいて、愛おしいキャラクターには心踊るし、廉次の味わった挫折や後悔には胸が締め付けられる。
そして何より、魅力的な導入。
それだけで読む価値がある一冊だ。

論ずるのが難しい作家で論ずるのが難しい本書ではあるが、語り口はとても現代的で中身はとても文学的。
そんな作品はなかなか貴重だと思う。
名著。

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