井上ひさし「十二人の手紙」

近頃本屋でやたらプッシュされている、昔の名作。
1978年の作品だそう。
書簡のみで書かれた短編集。
井上ひさしさんと聞いてあまりミステリのイメージはありませんでしたが、なかなかどうして良きミステリでした。

あらすじ

キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

帯に「どんでん返しの見本市だ!!」と書かれていますが、それはちょっと言い過ぎかと。
おそらく、この時代にはこういう構成のものは少なかったのでしょうが、現代で見るとなんだか落ちが予想がつくものが多い。
時代考証的なものを評価として入れるかどうかはそれぞれ考え方があるでしょうが、僕個人としてはあまり、関係なく評価していきたい。
逆に今の時代に読んで評価がぐんとあがることはあると思う。
それは結局僕にとって読書という行動がとても個人的なものだからかと。

と、言うものの、本書「十二人の手紙」が古い感じは全く無い。
いい意味でとてもクラシカルでオーソドックスな名短編集。
特に「プロローグ 悪魔」「ペンフレンド」「シンデレラの死」なんかは、懐かしい空気感が楽しい。

「エピローグ 人質」は、これぞ短編集の締め、というようなお手本のような作り。
多少無理やりな感じがあり、個人的には無理やり短編をまとめる必要はないんじゃないかな、と思ってしまう。
こういう手法も昨今ではもっと自然にやれている作家は多いですが、まだまだこのレベルまで届いていない作家も多い。

読みやすく、よくできた作品。
読書の楽しみは感じることができるし、本屋としては売りやすいだろうな。

2020年 年間ベスト

  1. 阿川せんり「パライゾ」
  2. 辻村深月「かがみの孤城」
  3. 阿川せんり「厭世マニュアル」
  4. 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」
  5. 芦沢央「許されようとは思いません」
  6. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  7. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  8. 朝井リョウ「星やどりの声」
  9. 辻村深月「島はぼくらと」
  10. 竹宮ゆゆこ「あなたはここで、息ができるの?」
  11. 辻村深月「朝が来た」
  12. 朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」
  13. 詠坂雄二「リロ・グラ・シスタ」
  14. 青木祐子「嘘つき女さくらちゃんの告白」
  15. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  16. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  17. ポール・アルテ「第四の扉」
  18. 辻村深月「家族シアター」
  19. 辻村深月「スロウハイツの神様」
  20. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  21. いしいしんじ「ぶらんこ乗り」
  22. 服部まゆみ「この闇と光」
  23. こだま「夫のちんぽが入らない」
  24. こざわたまこ「負け逃げ」
  25. 辻村深月「東京會舘とわたし」
  26. 黒澤いづみ「人間に向いてない」
  27. まさきとしか「完璧な母親」
  28. 湊かなえ「絶唱」
  29. 西尾維新「掟上今日子の推薦文」
  30. 伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」
  31. 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」
  32. 詠坂雄二「人ノ町」
  33. 井上ひさし「十二人の手紙」
  34. 似鳥鶏「叙述トリック短編集」
  35. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  36. 冲方丁「もらい泣き」
  37. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  38. 伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」
  39. 西尾維新「掟上今日子の備忘録」
  40. 萩原麻里「呪殺島の殺人」
  41. 矢野龍王「極限推理コロシアム」
  42. 村崎友「校庭には誰もいない」
  43. 岡嶋二人「タイトルマッチ」
  44. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  45. 佐藤究「QJKJQ」
  46. 櫻いいよ「交換ウソ日記」
  47. 辻村深月選「スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎008」
  48. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  49. 漢 a.k.a. GAMI「ヒップホップ・ドリーム」
  50. 郷一郎「名無しの十字架」
  51. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  52. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  53. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  54. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  55. 緒川怜「冤罪死刑」