近頃本屋でやたらプッシュされている、昔の名作。
1978年の作品だそう。
書簡のみで書かれた短編集。
井上ひさしさんと聞いてあまりミステリのイメージはありませんでしたが、なかなかどうして良きミステリでした。
キャバレーのホステスになった修道女の身も心もボロボロの手紙、上京して主人の毒牙にかかった家出少女が弟に送る手紙など、手紙だけが物語る笑いと哀しみがいっぱいの人生ドラマ
引用:楽天ブックス
帯に「どんでん返しの見本市だ!!」と書かれていますが、それはちょっと言い過ぎかと。
おそらく、この時代にはこういう構成のものは少なかったのでしょうが、現代で見るとなんだか落ちが予想がつくものが多い。
時代考証的なものを評価として入れるかどうかはそれぞれ考え方があるでしょうが、僕個人としてはあまり、関係なく評価していきたい。
逆に今の時代に読んで評価がぐんとあがることはあると思う。
それは結局僕にとって読書という行動がとても個人的なものだからかと。
と、言うものの、本書「十二人の手紙」が古い感じは全く無い。
いい意味でとてもクラシカルでオーソドックスな名短編集。
特に「プロローグ 悪魔」「ペンフレンド」「シンデレラの死」なんかは、懐かしい空気感が楽しい。
「エピローグ 人質」は、これぞ短編集の締め、というようなお手本のような作り。
多少無理やりな感じがあり、個人的には無理やり短編をまとめる必要はないんじゃないかな、と思ってしまう。
こういう手法も昨今ではもっと自然にやれている作家は多いですが、まだまだこのレベルまで届いていない作家も多い。
読みやすく、よくできた作品。
読書の楽しみは感じることができるし、本屋としては売りやすいだろうな。