辻村深月「東京會舘とわたし」
大好き、というか一番好きな作家かもしれない辻村深月さん。
辻村深月さんはとにかく人を描くのが上手。
登場人物がきちんと人間として考え、行動していて、そのおかげでファンタジー的な設定でも、リアリティが失われないし、感動してしまったり何か大きなものをもらえるんだと思う。
そんな辻村深月さんが東京會舘を描く。
人間じゃなくて建物を中心に、小説を描く。
楽しみでもあるし、正直怖さもある。
読了してみると、東京會舘を中心にしているが、いつも通り人間を描いていてさすがの物語。
やっぱり最高の作家さんだ。
大好き。これからもずうっと。
あらすじ
大正十一年、社交の殿堂として丸の内に創業。東京會舘は訪れる客や従業員に寄り添いつつ、その人の数だけ物語を紡いできた。記憶に残る戦前のクラシック演奏会、戦中の結婚披露宴、戦後に誕生したオリジナルカクテル、クッキングスクールの開校ー。震災や空襲、GHQの接収など荒波を経て、激動の昭和を見続けた建物の物語。
引用:楽天ブックス
辻村 深月 文藝春秋 2019年09月03日
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ネタバレありの感想
芥川賞・直木賞の授賞式として有名な東京會舘。
辻村深月さんも「鍵のない夢を見る」で直木賞を受賞。きっとその経験もあっての本書なんだろう。
本書では東京會舘に訪れる・関わる人々が東京會舘での出来事や思い出が描かれている。
そこはやはりいつも通りの辻村深月さんらしさ。
ただ、やはり辻村深月さんの弱点であると言ってしまいますが、人物描写に比べて情景描写が弱いせいでいまいち東京會舘がどういうところなのか、というのは想像し辛い。
東京會舘くらいは前提条件として知っておくべきなのかもしれないが、辻村深月さんはきっとそういう考えは持っていないだろう。
物語で描かれるレストランの「プルニエ」や「ロッシニ」で食事をしてみたいと思ったが、それもやはり料理やレストランの情景を想像して、ではなく、そこを愛する登場人物達を見て「こんなに素敵な人が愛したレストラン・料理はどんなのなんだろう」という気持ちからのものだった。
ちゃんと当時の東京會舘を再現して、映画やドラマになってくれたらすごく良さそう。
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