どこからどこまでがライトノベルで、どこからどこまでがライト文芸で、どこからどこまでが一般文芸なのかって話はあくまでどのレーベルから出版されたのか、ということで考えてます。
「とらドラ!」が大好きな僕でしたが、それでもライト文芸に移った竹宮ゆゆこさんの作品は尽く大好きだ。
全部、面白い。
全作にすごい力がある。
本書「あなたはここで、息ができるの?」は竹宮ゆゆこさんにとって初となる単行本作品。
単行本時には購入しなかったのですが、文庫化のタイミングで購入。
文庫は新潮文庫NEXということで、これもライト文芸。
2020年2月には角川から竹宮ゆゆこさんにとって2冊目となる単行本「いいからしばらく黙ってろ!」も発売中。
このまま文芸よりになっていくのかしらん。
まぁ、小説にとって「どこから出ているか」よりも大事なことがいくらでもあるので、そんなことにこだわるのもくだらないのかもしれないですけれど。
ループする時間。助けたかったのは、誰? なんでこんなことに、って、みんな思っているよね。私、観波邏々は二十歳の女子大生で、SNS 中毒で、アリアナ・グランデになりたくて。でも、いま目の前には倒れたバイク。潰れたヘルメット。つまり交通事故で死の瀬戸際。そんな私の時間は突然、ループし始める。青春が繰り返す。彼とまた出会って、恋をして、喧嘩して、そして。死も時間も飛び越える、絶対、最強の恋愛小説。
引用:楽天ブックス
竹宮ゆゆこさんの描く小説はテンポが早い。
開始早々、いきなり死につつある主人公。
そんな設定は正直に言うと、ひと昔前の創作物に多くあった。
そんな設定でも明らかにこれまでに体験したことのない世界観に入り込まされていくのは、竹宮ゆゆこさんの(それこそ”ライトノベル”という戦場で培ってきた)勢いと力のある語り口のおかげ。
あらすじの時点で「ループもの」と名言しており、「ループ」で読者に驚きを与えようとは思っておらず、あくまで恋愛小説・青春小説として描いているのだと思う。
ループものだが、同じ時間・同じ場面を描くことはとても少ない。
ループがなくても物語としては成立するが、ループ(地球が滅亡)することで、溜め込まれていく想いがきっとあるんだな、と感動してしまう。
現代の空気感を現代の言葉で表すのが純文学だとしたら本書は間違いなく純文学だ。
純文学らしいと言えば、舞城王太郎さんのような分圧も感じる。
舞城王太郎さんの勢い、圧力に竹宮ゆゆこさんが従来から持っていたポップさ、青臭さを足したような作品。
本書もやっぱり面白かった。
素晴らしい作家だ。
大好きな作家だ。
こんなに純粋な恋愛小説は久しぶりに読んだ。
近い将来、直木賞でも取るんじゃなかろうか。