「掟上今日子の備忘録」ドラマ化してたんですね。
ちょっとみたかったかも。
西尾維新ということで、キャラクター小説の要素は当然のように強かったんですけど、意外なほど本格ミステリーしていてびっくり。こんなのも書けるんですね、西尾維新。
好き嫌いや、評価は別としてもある種の天才と言っていい作家さんのうちの1人じゃないかしらん。
眠ると記憶を失う名探偵・掟上今日子。彼女のもとに最先端の映像研究所で起きた機密データ盗難事件の依頼がもたらされる。容疑者は4人の研究者と事務員・隠館厄介。身体検査でも見つからず、現場は密室。犯人とデータはどこに消えたのか。ミステリー史上もっとも前向きな忘却探偵、「初めまして」の第1巻。
引用:楽天ブックス
探偵の掟上今日子の性質上なのか、連作短編集のように事件は4つ。
掟上今日子は、睡眠すると全てを忘れてしまう探偵ということで、「忘却探偵」と呼ばれている。
その性質上、「最速の探偵」でもある。
一日ごとに記憶がリセットされる、という設定はフィクションの世界ではよくあるものの、そこをミステリーの枷として使うのは少し珍しいんじゃなかろうか。
と、さすがの西尾維新。「面白そうな」キャラクターを作らせたら見事。
ですが、その魅力的なキャラクターがミステリーという舞台で上手く機能しているかは、少し疑問。
なくなったSDカードを探す、というフィクションとしては地味な事件。
犯人を見つける手段は推理ではなく、ブラフ。
それはちょっとありがちすぎる手で、ミステリーの一番の見所であるフーダニット部分をこういう手で済ませてしまうのは残念。
しかし、肝心のデータを隠す方法として「一度データを削除し、データ復元ソフトで復元させる」という手段は、思いつかなかった。
誘拐された100万円の身代金として1億円を要求され、しかもそれを払おうとする、という魅力的な事件。
偽札かな、と思わされたが、実際にはクラウドのパスワードのための100万円。
そのアイデアもなかなか新しい感じではあるものの、記憶力が無いため100万円の通し番号をパスワードにしていた、というのはさすがに無理がある。
パスワードを全く覚えられないほどの記憶力なのにその100分の1はどう覚えていたんだろう。
宝探し。小説としては、少し地味。
もともと映像化する予定だったのかしらん。この話がドラマになっているかも知りませんが。
「さようなら、今日子さん」と繋がる話。
推理小説家の須永先生の死の真相を暴くため、須永先生の著作を徹夜で読み通すというもの。
寝たら記憶がリセットされるため、徹夜しなければいけない、というものですが、「初めまして、今日子さん」でも、すでに一回事件の途中で寝てしまっているので、危機感が薄いのがもったいない。
どうにかするんだろうな、って気がしてしまう。
やはり寝てしまった今日子さん。ですが、やっぱり大丈夫。
須永先生の死は病死だった、と今日子さんが確信に至った推理はとても優しく、切なく素敵なものだった。
ここを書きたくての一冊だったんだろうな、と思います。
一応、次の「掟上今日子の推薦文」も購入して積んでいる状態だけど、この調子だとシリーズ最後まで読むのはちょっと難しいな。
この後もっと面白くなってくれるといいんだけど。