こざわたまこ「負け逃げ」

文庫版の表紙はまたよしさんというイラストレーターさん。好きな人。
そして帯は辻村深月さんと、そりゃ惹かれてしまう。
「負け逃げ」というタイトルもいいですね。

あらすじ

国道沿いのラブホテルのネオンだけが夜を照らす村を、自転車で爆走する高校生の田上。ある晩ラブホ帰りの同級生、野口と遭遇した。足が不自由な彼女は“復讐”のため、村中の男と寝るという。田上は協力を申し出るが……。出会い系、不倫、家庭崩壊、諦めながら見る将来の夢。地方に生まれた全ての人が、そこを出る理由も、出ない理由も持っている。光を探して必死にもがく、青春疾走群像劇。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

僕は田舎出身ではないので、これがリアルなのかはわからないんですけど、田舎を舞台にした小説でよくある閉鎖感なんかが描かれた短編集。
じめっとした不快な閉塞感は結構うまく描かれている。
そんな中で、少しだけもがいて逃げだそうとする人物が出てきたり、どこか軽く受け入れているような人物がいたりと、どことなく希望を求めているような感じもあり、不快なだけで終わっていないのは良き。

やった方がいいのにやらない理由を探してしまうというのは、大なり小なり誰しもしていることでしょう。
本書では「村」は逃げ出す・抜け出すべきものとして描かれているが、誰もが「村」に囚われたまま。
でも、そういう姿を醜く描いているわけではない。
「村」を受け入れ、その中で希望を探していたり、誰かや自分を認めていたりと、根底は人間讃歌。

そして、タイトルの「負け逃げ」。
いいタイトルだ。
負けてもいいし、逃げてもいい。
そんなことを言ってくれているようだ。

負けてもいいし、逃げてもいいからこそ、チャレンジしてみてもいいのかもしれない。

2020年 年間ベスト

  1. 阿川せんり「パライゾ」
  2. 辻村深月「かがみの孤城」
  3. 阿川せんり「厭世マニュアル」
  4. 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」
  5. 芦沢央「許されようとは思いません」
  6. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  7. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  8. 朝井リョウ「星やどりの声」
  9. 辻村深月「島はぼくらと」
  10. 竹宮ゆゆこ「あなたはここで、息ができるの?」
  11. 辻村深月「朝が来た」
  12. 朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」
  13. 今邑彩「そして誰もいなくなる」
  14. 詠坂雄二「リロ・グラ・シスタ」
  15. 青木祐子「嘘つき女さくらちゃんの告白」
  16. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  17. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  18. ポール・アルテ「第四の扉」
  19. 辻村深月「家族シアター」
  20. 辻村深月「スロウハイツの神様」
  21. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  22. いしいしんじ「ぶらんこ乗り」
  23. 服部まゆみ「この闇と光」
  24. こだま「夫のちんぽが入らない」
  25. こざわたまこ「負け逃げ」
  26. 辻村深月「東京會舘とわたし」
  27. 黒澤いづみ「人間に向いてない」
  28. まさきとしか「完璧な母親」
  29. 湊かなえ「絶唱」
  30. 西尾維新「掟上今日子の推薦文」
  31. 伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」
  32. 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」
  33. 詠坂雄二「人ノ町」
  34. 井上ひさし「十二人の手紙」
  35. 似鳥鶏「叙述トリック短編集」
  36. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  37. 冲方丁「もらい泣き」
  38. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  39. 伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」
  40. 西尾維新「掟上今日子の備忘録」
  41. 萩原麻里「呪殺島の殺人」
  42. 矢野龍王「極限推理コロシアム」
  43. 村崎友「校庭には誰もいない」
  44. 岡嶋二人「タイトルマッチ」
  45. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  46. 佐藤究「QJKJQ」
  47. 七河迦南「夢と魔法の国のリドル」
  48. 櫻いいよ「交換ウソ日記」
  49. 青柳碧人「悪魔のトリック」
  50. 辻村深月選「スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎008」
  51. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  52. 漢 a.k.a. GAMI「ヒップホップ・ドリーム」
  53. 郷一郎「名無しの十字架」
  54. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  55. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  56. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  57. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  58. 緒川怜「冤罪死刑」