文庫版の表紙はまたよしさんというイラストレーターさん。好きな人。
そして帯は辻村深月さんと、そりゃ惹かれてしまう。
「負け逃げ」というタイトルもいいですね。
国道沿いのラブホテルのネオンだけが夜を照らす村を、自転車で爆走する高校生の田上。ある晩ラブホ帰りの同級生、野口と遭遇した。足が不自由な彼女は“復讐”のため、村中の男と寝るという。田上は協力を申し出るが……。出会い系、不倫、家庭崩壊、諦めながら見る将来の夢。地方に生まれた全ての人が、そこを出る理由も、出ない理由も持っている。光を探して必死にもがく、青春疾走群像劇。
引用:楽天ブックス
僕は田舎出身ではないので、これがリアルなのかはわからないんですけど、田舎を舞台にした小説でよくある閉鎖感なんかが描かれた短編集。
じめっとした不快な閉塞感は結構うまく描かれている。
そんな中で、少しだけもがいて逃げだそうとする人物が出てきたり、どこか軽く受け入れているような人物がいたりと、どことなく希望を求めているような感じもあり、不快なだけで終わっていないのは良き。
やった方がいいのにやらない理由を探してしまうというのは、大なり小なり誰しもしていることでしょう。
本書では「村」は逃げ出す・抜け出すべきものとして描かれているが、誰もが「村」に囚われたまま。
でも、そういう姿を醜く描いているわけではない。
「村」を受け入れ、その中で希望を探していたり、誰かや自分を認めていたりと、根底は人間讃歌。
そして、タイトルの「負け逃げ」。
いいタイトルだ。
負けてもいいし、逃げてもいい。
そんなことを言ってくれているようだ。
負けてもいいし、逃げてもいいからこそ、チャレンジしてみてもいいのかもしれない。