最近、辻村深月さんブームが続いている。
母親となった辻村深月さんだからこそ描けた物語。
映画化が決定。
河瀬直美監督ということで気になってます。多分見に行く。
長く辛い不妊治療の末、自分たちの子を産めずに特別養子縁組という手段を選んだ夫婦。
中学生で妊娠し、断腸の思いで子供を手放すことになった幼い母。
それぞれの葛藤、人生を丹念に描いた、胸に迫る長編。
第147回直木賞、第15回本屋大賞の受賞作家が到達した新境地。河瀬直美監督も推薦!
このラストシーンはとてつもなく強いリアリティがある。「解説」より
引用:楽天ブックス
リアリティがある。
これまでの辻村深月さんの作品の中でもリアリティが強い、という意見も見ますが、僕はいつも通りリアリティがある。と思いました。
でも、辻村深月さんの他の多くの作品っていうのは現実世界を舞台にしているものの、特殊能力や不思議な世界観なんかが追加されていて、リアルではないはず。
じゃ、リアリティってなんだろう、と。
辻村深月さんのリアリティっていうのは登場人物の人間性だろう。
本当にこういう人間がいる!っていう段階の話ではなく、こういう人間性でこういう事件に遭遇したらこういう風に思って、こういう風に行動するだろうという点ですごくリアル。
登場人物の感情や行動が脚本優先じゃないんですよね。
本書「朝が来る」もいつも通りリアル。
特別養子縁組で朝斗を迎えた栗原夫妻のもとにやってきた朝斗の母親・片倉ひかりを名乗る女性。
「朝斗のことを周りや本人に伝えられたくなければお金を」と脅迫するものの、片倉ひかりがそんなことをするはずがない、と断言し、そのことで簡単に諦める女性。
彼女は本当は誰なのか?というミステリーかと思ったら違った。
彼女は本当に片倉ひかりで、なぜ「あの片倉ひかり」が(言葉を選ばずに言うと)こんなにも落ちぶれてしまったのか。という、破滅的な物語だった。
第二章に入ると視点は片倉ひかりに変わり、なぜ彼女が朝斗を身篭ったのか、そしてなぜ、落ちぶれてしまったのか。
彼女を人生を見ていると、とても辛く苦しい。
それでもその中で希望をきちんと見つけもがき苦しむ姿はとても人間らしく美しくもある。
ハッピーエンドとは言えない終わりでも、希望はちゃんとあって辻村深月さんの優しさは健在。
やっぱり最高の作家さんだ。