いしいしんじ「ぶらんこ乗り」

友達といしいしんじさんの話になって久しぶりに読みたくなってデビュー作の「ぶらんこ乗り」を読む読む。
語り手は少女。
その少女から見た弟のことと、その弟が書いた”つくり話”の物語。
愛おしさと残酷さ。このバランス感覚が見事。
いしいしんじさんの変人さをたっぷり感じられる。

あらすじ

ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。もういない、わたしの弟。-天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。ある雪の日、わたしの耳に、懐かしい音が響いて…。物語作家いしいしんじの誕生を告げる奇跡的に愛おしい第一長篇。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

物語は、少女が古いノートを見つけるところから始まる。
そのノートは少女の弟が小学生だったころに書き残したもの。
ノートの中には、弟の”つくり話”や声を失った(正確には醜い声を人に聞かせないため出すことをやめた)弟の言葉。

まず、この弟の”つくり話”が最高に楽しい。
像のローリングについてなんて、この話の真偽が気になって、初読時も今回もグーグル先生に聞いてしまった。
検索するとやっぱりまずは本書のことが出てきて、それを読んでいるうちに「こんなことを調べてはいけない。信じるかどうかは僕自身が決めなければ」と思いとどまってしまったのは、初読時もそうだった。

いしいしんじさん、読みやすいんですけど割と独自のテンポ感があって、その独特のテンポ感が刊行を重ねるにつれ強くなっていて、最近の本は目滑りしてしまい、「ポーの話」を途中でやめてしまって以来読んでいなかった。(「トリツカレ男」は何度も読み返しているけど。)
最近の作品もまた読んでみようかな。
ストーリーテラーとしてはやっぱり素晴らしい作家さんだよね。
登場人物と世界観を優しい神の視点で見下ろしている感じが良き。
優しい視点ではあるものの、あくまで神からの視点のように少し距離感があり、そこに少しだけ残酷さを感じる。

残酷さ、というのはあくまで僕ら3次元の世界から見た風景の話で4次元的な視点でみるとまた違った風景なんだろうな、とは思うんですけど、それがどんな風景なのかはいしいしんじさんにしか見えていないんだろうな。

2020年 年間ベスト

  1. 阿川せんり「パライゾ」
  2. 辻村深月「かがみの孤城」
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  4. 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」
  5. 芦沢央「許されようとは思いません」
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  7. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
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  10. 朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」
  11. 詠坂雄二「リロ・グラ・シスタ」
  12. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  13. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  14. ポール・アルテ「第四の扉」
  15. 辻村深月「家族シアター」
  16. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  17. いしいしんじ「ぶらんこ乗り」
  18. 服部まゆみ「この闇と光」
  19. こだま「夫のちんぽが入らない」
  20. 黒澤いづみ「人間に向いてない」
  21. まさきとしか「完璧な母親」
  22. 湊かなえ「絶唱」
  23. 伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」
  24. 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」
  25. 詠坂雄二「人ノ町」
  26. 似鳥鶏「叙述トリック短編集」
  27. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  28. 冲方丁「もらい泣き」
  29. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  30. 伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」
  31. 岡嶋二人「タイトルマッチ」
  32. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  33. 辻村深月選「スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎008」
  34. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  35. 郷一郎「名無しの十字架」
  36. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  37. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  38. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  39. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  40. 緒川怜「冤罪死刑」