辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」

僕は辻村深月さんと同い年ということもあって、大きな事件を同じ年代で体験してきたこともあって、きっと死生観が少し似てるんだと思う。
そういったことで、どうしても辻村深月さんの死生観が生々しく突き刺さる。
そこがすごく心地よかったり、僕の精神状態によっては目を背けたくなったり。
本書「オーダーメイド殺人クラブ」は厨二病と言ってしまえばそれまでなんだけど、あの時代確かにこんな感覚はあった。
その感覚を思い出してしまった。

あらすじ

クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末はー。少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

以前ライブをやったときに自作の「グッドバイ」という曲で「死にたくない死にたくない、生きていたいわけでもないけど」と歌ったら、偶然ライブハウスに来ていた見知らぬイベンターさんがライブ終わりに声をかけてきて、「軽々しく死ぬとか歌うべきじゃないよ」と怒られたことがあって、その時僕は無性に腹が立って、「軽々しく歌ってるなんて決めつけないでくれ」と言い返したことがあった。

そんな僕なのでアンのことを笑うことはおろか、怒ることもできるわけがない。
アンの悩みを、アンの行動を軽々しく厨二病だ、なんて型にはめることはしたくない。
わざわざ辻村深月さんがアンを中二に設定し、そのアンが中二のうちに・・・と考えてしまったことは当然偶然なんかではなく、厨二病という言葉に対する何か、だと思う。
辻村深月さんが厨二病という言葉をどう捉えているのか、まだ僕には読み切れていないんだけど、きっとそれは前向きな考えを持って、前向きな考えを子供たちに持って欲しくて書いていることだと思う。
それは本書できちんと”その後”が描かれていることから感じられる。

決行日が近くにつれ、計画が失敗して欲しいと思うと同時に、アンがそれこそ死ぬ気で考えて出した計画が失敗してしまって彼女はその後立ち直れるのか、という不安も募ってくる。
その時点では計画が実行されてもされなくても、バッドエンドじゃないか。と心は荒む。

そんなハードルも素晴らしい方法で超えてくれる結末。
よかった。本当によかった。
ため息。
安堵のため息。

2020年 年間ベスト

  1. 阿川せんり「パライゾ」
  2. 辻村深月「かがみの孤城」
  3. 阿川せんり「厭世マニュアル」
  4. 辻村深月「オーダーメイド殺人クラブ」
  5. 芦沢央「許されようとは思いません」
  6. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  7. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  8. 朝井リョウ「星やどりの声」
  9. 辻村深月「凍りのくじら」
  10. 朝井リョウ「世にも奇妙な君物語」
  11. 詠坂雄二「リロ・グラ・シスタ」
  12. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  13. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  14. ポール・アルテ「第四の扉」
  15. 辻村深月「家族シアター」
  16. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  17. いしいしんじ「ぶらんこ乗り」
  18. 服部まゆみ「この闇と光」
  19. こだま「夫のちんぽが入らない」
  20. 黒澤いづみ「人間に向いてない」
  21. まさきとしか「完璧な母親」
  22. 湊かなえ「絶唱」
  23. 伊坂幸太郎「陽気なギャングは三つ数えろ」
  24. 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」
  25. 詠坂雄二「人ノ町」
  26. 似鳥鶏「叙述トリック短編集」
  27. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  28. 冲方丁「もらい泣き」
  29. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  30. 伊坂幸太郎「陽気なギャングの日常と襲撃」
  31. 岡嶋二人「タイトルマッチ」
  32. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  33. 辻村深月選「スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎008」
  34. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  35. 郷一郎「名無しの十字架」
  36. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  37. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  38. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  39. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  40. 緒川怜「冤罪死刑」