なんだかんだ好きな朝井リョウ。
その中でも本書「世にも奇妙な君物語」かなり良き。かなり好き。
タイトルからもわかるように”朝井版「世にも奇妙な物語」”とのことでしたが、まさかここまで「世にも奇妙な物語」だとは。
短編集なんですけど、全編そのまま「世にも奇妙な物語」で使えそう。
今、「世にも奇妙な物語」がやっているのかどうかは知らないけど。
オチがすごい! いくつもの書店で週間ランキング1位に輝いた話題の小説!異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずにーー。では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。
引用:楽天ブックス
”朝井版「世にも奇妙な物語」”とのことですが、僕はまだ”朝井リョウらしさ”がイマイチわからない。
これまで読んだのが「何者」、「桐島、部活やめるってよ。」、「星やどりの声」とそれぞれ違った顔を見せてくれるので”朝井リョウらしさ”とは?って感じだ。
一編目のタイトルから「世にも奇妙な物語」だ。
そしてさらに面白いのが、全短編に言えることなんだけど、タイトルの出てくるタイミング。
小説なのにわざわざアバンタイトルが用意されている。
シェアハウスで暮らす4人の男女。
飲酒していたことをかたくなに隠す住民や、主人公の過去、そして「世にも奇妙な物語」オマージュ作品ということで、いわばメタ的に不穏な空気が蔓延している。
その違和感を味わっていると、ページを開いて落ちはたった一行。
見事。
どこかで、それこそ何度か見たような設定の短編。
それでも、頭一つ抜け出ているように感じたのは単純に筆力の問題かな。
やっていることも落ちもありがちと言えばありがちなんだけど、心地よいくらいの胸糞悪さのバランスが見事。
”小説なんかを読むのは非リア”というところをうまく使っている。
朝井リョウは現実世界と小説世界の境界線の扱いがうまいな。
こういうのも「世にも奇妙な物語」でよくあった!
”モンペ”という社会問題をヒリヒリしつつで面白おかしく。
一回落ちがくるものの、もうひとつ大きな展開があって、これは予想できなかった。
近頃特に、マスコミのくだらさなというのをヒシヒシと感じているわけですけど、そうなんすよ、こういうくだらない奴らってとにかく理屈が好きなんですよね。
そうじゃなくて、個人的にどう思ってんだよ!ってのが僕は聞きたいのに、頭いいフリばかりしやがって。
と、まんまとイライラさせられた。
朝井リョウにしてやられた。
そして爽快で空恐ろしい落ち。
良き。
ここまではいい短編集だな、くらいでしたが、この短編で一気に本書が好きになった。
パロディとメタ。結局僕はメタネタに弱いんだ。
俳優に詳しくないため、元ネタがわからないのが何人かいたのは残念だった。
落ちも「世にも奇妙な物語」っぽくて良き。
それぞれの短編がそれぞれに面白く、その上「脇役バトルロワイアル」で世界をもう一個広げられた。
楽しかった。好き。好き。良き。良き。