僕のベストミステリーの1冊である「電氣人間の虞」が大好きすぎてあんまり読めていない詠坂雄二。
僕の知っているこれまでの詠坂雄二とは少し雰囲気の違った本書「人ノ町」。意識して”違う”ものを書いているような気がする。
何が起こっているのか? そして彼女は何者か──旅人は彷徨い続ける。文明が衰退し、崩れ行く世界を風に吹かれるままに。訪れた六つの町で目にした、人々の不可思議な営みは一体何を意味するのか。終わりない旅路の果てに、彼女が辿り着く、ある「禁忌」とは。数多の断片が鮮やかに収斂し、運命に導かれるようにこの世界の真実と、彼女の驚愕の正体が明らかになる。注目の鬼才による、読者の認知の枠組みをも揺さぶる異形のミステリー。
引用:楽天ブックス
ミステリーと言ってはいるものの、ミステリーと聞いて期待するようなものでは無い。
荒廃した世界を旅する旅人が訪れた風変わりな町々。
まるで「キノの旅」だが、まさしく「キノの旅」。
全体的に雰囲気重視で書かれている印象。
荒廃した世界がファンタジーかと思いきや今の世界から地続きの話という見せ方。
現代の世界に対する警笛のような小説。
「昔々」の前にはもっと「昔」があるし、「めでたしめでたし」のあとにもまだ物語は続く。
それはきっと「世界はこうして生まれた」の前にも物語はあったんだし、「世界はこうして滅亡した」のあとにも物語はあるんだな。
これで詠坂雄二は3冊目なんだけどちょっと今までとは雰囲気の違う作品。
僕が詠坂雄二に期待するのはこういうことじゃないんだな、と。
もっと振り切っちゃって欲しい。
詠坂雄二にはミステリィを期待しているんだ。