藤野恵美「ぼくの嘘」

「ハルさん」の藤野恵美。
随分昔に読んだんだけど「ハルさん」は結構よかった覚えがあるので、読む読む。
本書「ぼくの嘘」は「わたしの恋人」という本と対になっているようなので、そっちも読まないと本当の評価はできないのかな。
あくまで、本書1冊での評価は、いまいち。

あらすじ

人を好きにならずにすむ方法があるなら教えてほしい。なぜなら彼女は、親友の恋人だから。笹川勇太は恋する相手をめぐって、学内一の美少女・あおいに弱みを握られてしまった。そんな彼女も、恋となると思うようにはいかない。好きな人と会うため、勇太に恋人のふりをしデートしてほしいと頼んできた。振りまわされながらも、次第にあおいに心惹かれてゆく勇太。そして複雑な関係の二人に事件が。恋と友情を描く青春小説!
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

何より設定があまりにもありきたりすぎやしないか。
学校一の美少女(あおい)がオタク男子(笹川)に「恋人のフリをしろ」と。

笹川くんは親友(古賀くん)の彼女(森さん)に恋をしていて、あおいちゃんは親友の女の子に恋をしている。
美少女で性格がキツめというのも、いかにも漫画的なキャラクターで、頭も良さそうな描写なのに弱みを握ったはずの笹川くんに対して、自分も弱みを簡単に告白してしまうのに違和感がある。
小説としてそこを広げていって「本当は誰かに話を聞いて欲しかった」みたいな話で笹川くんが心打たれて、ってことなら理解できるんだけど、そんな描写はなく、なぜ笹川くんが黙って言うことを聞くのかが納得できない。
そこはもちろん、笹川くんも変わりたかった、とか、森さんに振り向いて欲しいとかあればよかったのに。

きっと、笹川くんの一途さみたいなのを表したかったりしてるんじゃなかろうかと思うんだけどそのせいでキャラクターが作者にとって都合よすぎる動きしかしてない。
もったいない。

結末も予想通りすぎて逆に予想外なレベル。
と、悪態ばっかついているように聞こえますが、とてもサクサク読めるし、テンポの良さやキャラクターの可愛らしさってのはとても良き。

2020年 年間ベスト

  1. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  2. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  3. 朝井リョウ「星やどりの声」
  4. 辻村深月「凍りのくじら」
  5. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  6. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  7. ポール・アルテ「第四の扉」
  8. 辻村深月「家族シアター」
  9. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  10. こだま「夫のちんぽが入らない」
  11. まさきとしか「完璧な母親」
  12. 湊かなえ「絶唱」
  13. 詠坂雄二「人ノ町」
  14. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  15. 冲方丁「もらい泣き」
  16. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  17. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  18. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  19. 郷一郎「名無しの十字架」
  20. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  21. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  22. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  23. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  24. 緒川怜「冤罪死刑」