まさきとしか「完璧な母親」

これ面白い。面白かった。
息子を池で溺死させてしまった母親の千可子が娘に息子と同じ「波琉」子という名前をつけ、波琉子を波琉の生まれ変わりとして育てる。
誕生日には息子が生きていたら、という本数のろうそくを立て「はるちゃん」と呼ぶ。
これだけで母親の狂気さや(言葉は違うかもしれないが)いじらしさが出ててちょうどよく怖い。

あらすじ

流産を重ね授かった最愛の息子が池で溺死。絶望の淵で母親の知可子は、息子を産み直すことを思いつく。同じ誕生日に産んだ妹に兄の名を付け、毎年ケーキに兄の歳の数の蝋燭を立て祝う妻の狂気に夫は怯えるが、知可子は歪な“完璧な母親”を目指し続ける。そんな中「あなたの子供は幸せでしょうか」と書かれた手紙がー。母の愛こそ最大のミステリ。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

あらすじを見て、読みはじめた時点ではただただ母親が狂っていき、それに伴い家族が崩壊していく様を読まされるのかな、と思った。
旦那からDVされて逃げてきた隣人の家族との交流によって少しづつ(もちろんそんな描写はないが)目に光が戻ってくるような、それに伴いますますおかしくなっていきそうな母親。

後半は、母親に愛されずに育てられた成彦と、自分が幼い頃に池で溺死した男の子の生まれ変わりと言っているその姉が出てきて、話は意外と複雑で怪しい方向へ進んでいくのがとても不安な気持ちにさせられて楽しい。

これ、読み終わって思い返してみると、千可子の強烈な個性を中心に持ってきたキャラクター小説だったのかもしれない。
その強烈な個性を活かすために、生まれ変わりという、現実から少し離れた展開を持ってきて話を華やかにしてくれている。
でも、こういう小説で大事な不快感やモヤモヤ感をきちんと残しているのが見事。

面白かった!いえい。

2020年 年間ベスト

  1. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  2. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  3. 朝井リョウ「星やどりの声」
  4. 辻村深月「凍りのくじら」
  5. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  6. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  7. ポール・アルテ「第四の扉」
  8. 辻村深月「家族シアター」
  9. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  10. こだま「夫のちんぽが入らない」
  11. まさきとしか「完璧な母親」
  12. 湊かなえ「絶唱」
  13. 詠坂雄二「人ノ町」
  14. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  15. 冲方丁「もらい泣き」
  16. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  17. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  18. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  19. 郷一郎「名無しの十字架」
  20. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  21. 小嶋陽太郎「気障でけっこうです」
  22. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  23. 鈴木おさむ「名刺ゲーム」
  24. 緒川怜「冤罪死刑」