久々に不条理なものを読んだ。
新潮ミステリー大賞受賞作なんだけど、ここまで不条理なものをミステリーとして分類してしまう大胆さには驚く。
でも、全体的には面白く読めた。
いい意味で、ふざけた小説。伊坂幸太郎が絶賛している小説。
動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから」。
引用:楽天ブックス
書き出しがとにかく最高。
シロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。
この書き出しの時点で不条理な小説である予想は付きつつ読み進めていくと割と早い段階で思った以上の不条理さに面食らう。
キャラクター描写も独特で尖ったキャラクターばかりが出てくる。
こういうところが伊坂幸太郎の趣味にハマったんだろうと思う。
独特なキャラクターたちなのに、テンポのいい会話中心で話は進むので読みづらさは少なめ。
筆力ある作家さんなんだと思う。
新潮ミステリー大賞なのに、謎はほどんど解かれないまま終わる。
そもそも、一番の謎が「私は私なのか」という哲学的な謎なので、そりゃ解けないよね。
物事には色々な側面がある、という当たり前のことを言っているだけと言えばそれだけの小説。
落ち着かない気分になる読後感だけど、後味が悪いってわけではない。
この独特さは、なかなか他に無い。
この作家さんの本、他のも読もう。そうしよう。
良き良き。