こだま「夫のちんぽが入らない」

すごい売れてた印象の本書「夫のちんぽが入らない」。
僕の購入した版の帯を見ると21万部突破とのことだけど、印象としてはもっと売れてるのかと思っていた。
それだけタイトルの印象が強いってことなのかしらん。
タイトルは衝撃的だけど、テーマは「普通とはなんぞや」といったすごく現代的でこれからの普遍的になりそうなテーマ。

本書はもともと、「文学フリマ」で発表した同人誌に寄稿したエッセイを元に私小説へ書き直したものだそうで、エッセイの時はどういったものだったのか、そっちも興味ある。

あらすじ

ひとりの女性の静かな叫びが、多くの心を貫いたーー衝撃の感動作。同じアパートに暮らす先輩と交際を始めた“私”。だが初めて交わろうとした夜、衝撃が走る。彼の性器が全く入らないのだ。その後も「入らない」一方で、二人は精神的な結びつきを強め、夫婦に。いつか入るという切なる願いの行方はーー。「普通」という呪いに苦しんだ女性の、いじらしいほど正直な愛と性の物語。
引用:楽天ブックス

ネタバレなしの感想

私小説と言うことで、夫婦の話ではなくあくまで「私」の話って所がまずすごく良い。
”夫のちんぽが入らない”ってことを乗り越えようと努力しているのが、「私」だけに見える。
実話を元にした、と言うことなので、実際に夫がどうしていたのかはわからないけど、本書で思い悩んでいるのは「私」だけに見える。
でも、私小説なんだからそれでいいんですよね。
人は悩んでる時に「他の人だって、悩んでいるんだから」なんて思えない人は多いのは当たり前。

「夫のちんぽが入らない」ってことをきっかけの一つとして、少しづつ壊れていく「私」の心と体。
「普通」を押し付けられて、「普通」を受け入れようとして少しづつ壊れていく。
人間の多様性が叫ばれる時代に、とても現代的なテーマ。
こういう悩みを多くの人が抱えていて、そこに解決を求めているからこその本書のヒット。
本書での解決は、「普通じゃない」ことをしっかりと自分が受け入れて、押し付けてくる人間に対して小さな抵抗を見せるというだけのもの。
でも、その小さな抵抗でもすることによって、自分の立っている場所が確かなものになるんだろうな。

エッセイと私小説の違いについて、語り切れるだけの語彙や知識もないのですが、もともとエッセイだったとは思えないほど、見事な描写。
「ちんぽが入らない」件の描写が可笑しく、物悲しく、興味深い。
でん。ででん、でん。
このオノマトペとか本当に見事。
どんな様子だったか、しっかりと想像がつく。

諸々、良き小説でした。
こだまさんの次の小説が楽しみだし、エッセイはもう出ているみたいなので、そっちも読んでみようかしらん。

2020年 年間ベスト

  1. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  2. こだま「夫のちんぽが入らない」
  3. 冲方丁「もらい泣き」
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