東野圭吾「恋のゴンドラ」

「恋のゴンドラ」東野圭吾らしからぬすごいタイトルだな、とは思っていたけど、まさかこんなにもタイトルに則した内容だとは。
ラブコメ。ラブコメディだった。
東野圭吾がコメディを描きたがっているのは、知っていた。そしてそれをあまり書かせてもらえていないんだろうな、というのも想像がついていた。
僕らが、東野圭吾にあまりコメディを求めていないからだ。
そう言う点では、とても楽しんで書いているような印象を受ける。

ひと昔前のミステリーに出てくるようなやけに軽いキャラクター描写(本書では例えば水城など)はとても東野圭吾らしさがあるものの、人死にのない東野圭吾はやっぱり少し物足りない。

あらすじ

都内で働く広太は、合コンで知り合った桃美とスノボ旅行へ。
ところがゴンドラに同乗してきた女性グループの一人は、なんと同棲中の婚約者だった。
ゴーグルとマスクで顔を隠し、果たして山頂までバレずに済むのか。
やがて真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込み、衝撃の愛憎劇へと発展していく。
文庫特別編「ニアミス」を収録。
引用:楽天ブックス

ネタバレなしの感想

連作短編集で、1編1編の質も高めで、それぞれの短編の絡み方もとても上手くて、さすが東野圭吾。
もちろんいつも通り、とても読みやすい。
それを軽い、と捉えることもできますが、僕ももう、”ドフトエフスキー読んでりゃえらい”、みたいな考えは捨てたので、読みやすさは単純にプラスに捉えています。
特に、こういう少し入り組んだ構成の場合には、読みやすいさがそのまま相関のわかりやすさにも繋がっていると思う。
本書は結構”伊坂幸太郎”っぽいという印象を持たれかねない一冊で、もちろん”伊坂幸太郎”も読みやすい作家だけど、東野圭吾はその上を行ってると思う。
それぞれのキャラクターのキャラクター性や関係性がすごくわかりやすいんですよね。漫画的というか。
こういう技術はやっぱり東野圭吾の凄さの一つ。

ラブコメではあるものの、ミステリー作家としてやはりミステリー要素というか、驚きの真実要素はそこかしこに用意してくれてます。
僕はミステリーのどんでん返しや、驚愕の真相よりも(もちろんそういった要素も大好きですが)、派手な事件や、魅力的な犯人・探偵、そして不思議な読書体験、なんかが好きなので、本書がミステリー的気分で満足したとは言えないものではありますが。

舞台を雪山にしたのも良き。
ゴーグルやウェア、スキー・スノボを上手く物語に活かしていて、舞台の必然性が高いだけでなく、なによりも、なんとなく感じるバブルな雰囲気を演出できていると思う。タイトルもそうなんですよね、「恋のゴンドラ」。古いもんなんか。

基本的にずうっと面白く、ラストの展開も笑えるもの。
軽くて笑える。っての雰囲気が好きな人は楽しめると思います。
やっぱり小説家として上手い。

2020年 年間ベスト

  1. 辻村深月「ぼくのメジャースプーン」
  2. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
  3. 朝井リョウ「星やどりの声」
  4. 辻村深月「凍りのくじら」
  5. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
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  7. ポール・アルテ「第四の扉」
  8. 辻村深月「家族シアター」
  9. 彩坂美月「僕らの世界が終わる頃」
  10. こだま「夫のちんぽが入らない」
  11. まさきとしか「完璧な母親」
  12. 湊かなえ「絶唱」
  13. 詠坂雄二「人ノ町」
  14. 一條次郎「レプリカたちの夜」
  15. 冲方丁「もらい泣き」
  16. 東野圭吾「恋のゴンドラ」
  17. 歌野晶午「舞田ひとみ11歳、ダンスときどき探偵」
  18. 阿藤玲「お人好しの放課後 (御出学園帰宅部の冒険) 」
  19. 郷一郎「名無しの十字架」
  20. 永嶋恵美「明日の話はしない」
  21. 藤野恵美「ぼくの嘘」
  22. 緒川怜「冤罪死刑」