澤村伊智「ぼぎわんが、来る」

応募時には「ぼぎわん」で刊行時に「ぼぎわんが、来る」になって映画時に「来る」。
読む前はなんか皮肉なもんだなー、とか思ってたけど、読了後はそれがなんかとても良いと思えた。
こうやって伝承されていくものなのかもしれない。

ホラーは苦手なんだけど、伊集院光さんが出てる、ということでまず映画版に興味を持った。
でも、ホラー映画はホラー小説よりも怖いというか、びっくりしちゃうので、原作を読むことに。
伊集院光さん、関係なくなっちゃった。

でも、読んでよかった。
めっちゃめちゃ面白かった!
怖さよりも、最後まで面白さが先にあった感じ。

あらすじ

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。
それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の怪我を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。
その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?
愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。
真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。

“あれ”からは決して逃れられないーー。綾辻行人・貴志祐介・宮部みゆきら絶賛の第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作!
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

ホラー小説ってあんまり読んできていないので、こういう構成のものが一般的によくあるのかわからないんですけど、語り手である人物が途中退場していくというのは、すごくびっくりしました。
1章読んでいる時には、語り手の田原秀樹が死ぬとは思わなかったし、2章では語り手が秀樹の妻である、香奈に変わり、その香奈まで、(死なないまでも)退場してしまうとは。
そして、主人公かと思った真琴までもが、2章で離脱。
そんな風に中心人物が変わっていく小説。
面白い。

ホラー小説なので、もちろん怖い。
本書「ぼぎわんが、来る」がすごいのは、まず怖いのが人間。
1章の後半。
秀樹が受話器から聞いた「嫌がらせだよ。会社にも来る。誰かに逆恨みされてるらしい」の声が”うんざりしている風を装った、取り繕うような声”だったことで、その後の「たかが一人産んだくらいで偉そうにするな!」の怒鳴り声。
そこで、秀樹の本性が見えてきて、怖い。
もちろん”ぼぎわん”も怖く、3章でその姿形が描かれ出すものの、描写は少なめで、読者が勝手に頭の中で作り上げた”ぼぎわん”はとてもとても、恐ろしいものになってしまう。
その必要以上に描写しないのが、とても上手。
これ、映画ではどうなってるんだろう。
気になるので、やっぱり見たいな。
でも、先に小説を読めたのはすごくよかった。

3章になると、話は深くなっていき、田原家の過去までも巻き込んでいく。
”ぼぎわん”を退治した後も、知紗の寝言はあまりにも分かりやすく不穏なもの。
でも、その前の野崎の優しさがあれな香奈と知紗はきっと大丈夫だろう、と思えるいいラストだった。
良き良き。

2020年 年間ベスト

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  2. 綿矢りさ「蹴りたい背中」
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  4. 辻村深月「凍りのくじら」
  5. 辻村深月「子どもたちは夜と遊ぶ」
  6. 澤村伊智「ぼぎわんが、来る」
  7. ポール・アルテ「第四の扉」
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