乙野四方字「ミウ -skeleton in the closet-」

面白かった。
主人公であり、ワトソン役の地境千弦のキャラクターが「やれやれ系」的なラノベ的なキャラクターで作中で本人も言っているが”少し痛い”。
そんな所が読み始めの頃は少しそこが引っかかっていたけど、読み進むうちに気にならなくなってくるというか、だんだん好きになってくるし、探偵役のミユなんかもラノベ的でいいキャラクター。

講談社タイガ。
講談社のHPを見ると「キャラクター文芸」という括りだそうな。
なるほど。
そうすると、新潮文庫NEXとは少し立ち位置が違うのか。
それで、どちらかというと新潮文庫NEXの方が好きな作品の方が多いのかもしれない。
だけど、本書「ミウ -skeleton in the closet-」はとてもとても良き。
楽しかった。

あらすじ

就職を前に何も変わらない灰色の日々。
あたしは何気なく中学の卒業文集を開き、『母校のとある教室にいじめの告発ノートが隠されている』という作文を見つける。
それを書いた元同級生が自殺したと知ったあたしは、その子のSNSのパスワードを暴いてログインし、その子の名でSNSを再開した。
数日後、別の元同級生が謎の死を遂げる。
灰色の日々に、何かが始まったーー。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

ミステリーとしては、魅力的なトリックや、大きく裏切られる部分は少なめ。
それでも、テンポの良さやキャラクターの良さ、何より(人間に興味のない)千弦と(人間に興味がありすぎる)ミユの関係性なんかが楽しくて、キャラクター小説としてすごく良き良き。

本書の一番見せ場はマキの動機だろうけど、そこは結構残念な描かれ方だった。
香典の4,880円はさすがに露骨。
動機として「ジュース代の120円を返して欲しい」というのはすごく突飛でフィクションとしてとても魅力的。
なのに、香典が4,880円で相場が5,000円というヒントまで。
その前にも、被害者である原下さんがジュース代を返さない件をやけに強調されていたり、マキが貸し借りに厳しい件もやけに強調されていて、読者だからなのかもしれないが、動機はすぐに分かる。
なのに、探偵であるミユがそこに気づいていなかったり、真相を知った時に驚いていたり、というのがやけに不自然に見えてしまう。

あと、帯の「ラスト10ページは絶対に先に読まないでください」なんてのは余計。
ラスト10ページを先に読むような人はそんな帯があったらますます読みたくなっちゃうでしょう。
というか、こんなの書いてなければ、こんなちょうどいいところから読むなんてことはないでしょう。

講談社タイガということで、続編が出るはず(ですよね?)なので出たら読もう。
続編も読みたい。
最後に続編への種もたくさん蒔いていたし。
楽しみ。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  10. 宮下奈都「たった、それだけ」
  11. 小路幸也「空を見上げる古い歌を口ずさむ」
  12. 彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」
  13. 小林泰三「アリス殺し」
  14. 古処誠二「アンノウン」
  15. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  16. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  17. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  18. 高山一実「トラペジウム」
  19. 月原渉「首無館の殺人」
  20. 辻村深月「きのうの影踏み」
  21. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  22. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  23. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  24. 美輪和音「強欲な羊」
  25. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  26. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  27. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  28. 北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
  29. 降田天「彼女はもどらない」
  30. よしもとばなな「ハゴロモ」
  31. 河野裕「いなくなれ、群青」
  32. アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」
  33. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  34. サキ「サキ短編集」
  35. 中町信「天啓の殺意」
  36. 三浦しをん「小暮荘物語」
  37. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  38. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  39. 東野圭吾「赤い指」
  40. 小林泰三「世界城」
  41. 西尾維新「化物語」
  42. 湊かなえ「リバース」
  43. 西澤保彦「七回死んだ男」
  44. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  45. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  46. 乙野四方字「ミウ -skeleton in the closet-」
  47. 豊島ミホ「大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル」
  48. 清涼院流水「ジョーカー 」
  49. 清涼院流水「コズミック 」
  50. 早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
  51. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  52. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  53. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  54. 雫井脩介「犯罪小説家」
  55. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  56. 下村敦史「真実の檻」
  57. 河合莞爾「デッドマン」
  58. 蒼井上鷹「出られない五人」
  59. 笹沢佐保「どんでん返し」
  60. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  61. 村崎友「夕暮れ密室」
  62. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  63. 北森鴻「共犯マジック」
  64. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  65. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  66. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  67. 深木章子「敗者の告白」
  68. 佐々木丸美「崖の館」
  69. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  70. 日高由香「ゴメンナサイ」
  71. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  72. 太田忠司「僕の殺人」
  73. 悠木シュン「スマート泥棒」
  74. 小山田浩子「穴」
  75. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  76. 獅子文六「ちんちん電車」
  77. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  78. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  79. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  80. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  81. 藤崎翔「殺意の対談」
  82. 松下麻理緒「誤算」
  83. 小林由香「ジャッジメント」
  84. 朝倉宏景「白球アフロ」
  85. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  86. 美輪和音「8番目のマリア」
  87. 大石圭「60秒の煉獄」
  88. 小林聡美「読まされ図書室」
  89. 平川陽一「山と村の怖い話」
  90. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  91. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  92. 浅暮三文「困った死体」
  93. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」