豊島ミホ「底辺女子高生」

多分僕が人生で一番繰り返し読んだのが、「寺山修司少女詩集」で、次が「人間失格」で、その次くらいに繰り返し読んでいる「底辺女子高生」。
「寺山修司少女詩集」はここ何年かは少し開いて、って感じで頭から読み直すってことは減ってしまったけど、学生時代は常に持ち歩いていたくらい好きだったし、「人間失格」は読みやすさと、その時の自分の精神状態の確認のためにも再読を繰り返している。
そして「底辺女子高生」は単純に好きなんだよな。
ただただ、面白いし、「底辺女子高生」もその時々によって受ける印象が意外と変わる。
今回はなんだかすごく文学的に受け止めてしまった。
良き良き。
最高に良き。

あらすじ

「本当の私」なんて探してもいません。みっともなくもがいてる日々こそが、振り返れば青春なんです―。「底辺」な生活から脱出するため家出した高校二年の春。盛り下がりまくりの地味な学祭。「下宿内恋愛禁止」の厳粛なる掟。保健室の常連たち。出席時数が足りなくて、皆から遅れた一人きりの卒業式。最注目の作家によるホロ苦青春エッセイ。
引用:楽天ブックス

感想

エッセイ集ですが、本当に素晴らしい一節に溢れた本で、いつも言うけど

平和だ。世界はちっちゃいほど平和になりやすいのだ。

なんかは、後世に残したいほど素晴らしい一節だと思うし、

無理。オラには「あたし」って言うの無理。

なんて、放哉にも引けを取らないくらいの名句だと思う。

中学時代の同級生であるYさんの葬式のエピソードである「夏の終わり」なんかは、すごく胸がざわざわし、文学を感じる。
(あくまで個人的見解として)文学とは、いかに自分をさらけ出すかである(という考えは少なくとも、間違ってはいないと思う)。
Yさんという仲の良くなかった、クラスで浮いていた男子の死に向き合い、他のクラスメイトだったら、と考えてしまう空恐ろしさ。そんな自分の汚い部分をしっかりとこの短いエッセイで描ききっているのは本当に見事。
そんな葛藤の中、休み時間に一緒にウノをやったことを思い出す。
それは、ただ席が近かっただけなんだろうけど、その生々しさや、偶然が作り出した思い出は美しくもあるし、汚くもある。その二面性はまさしく文学だ。
今回読んだ時、なんだか普通に泣いてしまった。

「卒業式は二回」で見せる心情が揺れる様の描き方は本当に見事で、すごくグッとくる。
グッと来るけど、サラっと終わり、必要以上に泣かせようとしない豊島ミホの照れ隠しのようなものを感じる。
そんな人間性も含めて、本当に素晴らしい一冊。
大好き。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  10. 宮下奈都「たった、それだけ」
  11. 小路幸也「空を見上げる古い歌を口ずさむ」
  12. 彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」
  13. 小林泰三「アリス殺し」
  14. 古処誠二「アンノウン」
  15. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  16. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  17. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  18. 高山一実「トラペジウム」
  19. 月原渉「首無館の殺人」
  20. 辻村深月「きのうの影踏み」
  21. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  22. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  23. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  24. 美輪和音「強欲な羊」
  25. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  26. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  27. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  28. 北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
  29. 降田天「彼女はもどらない」
  30. よしもとばなな「ハゴロモ」
  31. 河野裕「いなくなれ、群青」
  32. アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」
  33. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  34. サキ「サキ短編集」
  35. 中町信「天啓の殺意」
  36. 三浦しをん「小暮荘物語」
  37. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  38. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  39. 東野圭吾「赤い指」
  40. 小林泰三「世界城」
  41. 西尾維新「化物語」
  42. 湊かなえ「リバース」
  43. 西澤保彦「七回死んだ男」
  44. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  45. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  46. 乙野四方字「ミウ -skeleton in the closet-」
  47. 豊島ミホ「大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル」
  48. 清涼院流水「ジョーカー 」
  49. 清涼院流水「コズミック 」
  50. 早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
  51. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  52. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  53. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  54. 雫井脩介「犯罪小説家」
  55. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  56. 下村敦史「真実の檻」
  57. 河合莞爾「デッドマン」
  58. 蒼井上鷹「出られない五人」
  59. 笹沢佐保「どんでん返し」
  60. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  61. 村崎友「夕暮れ密室」
  62. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  63. 北森鴻「共犯マジック」
  64. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  65. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  66. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  67. 深木章子「敗者の告白」
  68. 佐々木丸美「崖の館」
  69. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  70. 日高由香「ゴメンナサイ」
  71. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  72. 太田忠司「僕の殺人」
  73. 悠木シュン「スマート泥棒」
  74. 小山田浩子「穴」
  75. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  76. 獅子文六「ちんちん電車」
  77. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  78. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  79. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  80. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  81. 藤崎翔「殺意の対談」
  82. 松下麻理緒「誤算」
  83. 小林由香「ジャッジメント」
  84. 朝倉宏景「白球アフロ」
  85. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  86. 美輪和音「8番目のマリア」
  87. 大石圭「60秒の煉獄」
  88. 小林聡美「読まされ図書室」
  89. 平川陽一「山と村の怖い話」
  90. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  91. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  92. 浅暮三文「困った死体」
  93. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」