「首無館の殺人」。
タイトルが素晴らしすぎる。
これ、今までなかったの?本当?
ワクワクするタイトルオブザイヤーだ。発売は2018年だけど。
首のない死体が一つ。浮遊する首が一つ……。没落した明治の貿易商、宇江神家。 令嬢の華煉は目覚めると記憶を失っていた。家族がいて謎の使用人が現われた。館は閉されており、出入り困難な中庭があった。そして幽閉塔。濃霧たちこめる夜、異様な連続首無事件が始まる。奇妙な時間差で移動する首、不思議な琴の音、首を抱く首無死体。猟奇か怨恨か、戦慄の死体が意味するものは何か。首に秘められた目的とは。本格ミステリー。
引用:楽天ブックス
良い意味で、とても良い意味で”怪しい”点が多すぎる。
1800年代の富豪。
首無館という一風変わった館。
絶海の孤島。
記憶を失った主人公。
気狂いが幽閉されている。
と、ミステリー好きなら涎ものの設定が盛りだくさん。
ミステリーの面白さって、色々あると思うんですよ。
謎の難しさ、どんでん返し、社会に対するメッセージ、魅力的なキャラクターなどなど。
本書「首無館の殺人」は”雰囲気”。
この本格ミステリーの雰囲気を新刊で読めるというのはとても幸福なことだ。
「首無館の殺人」というタイトルを裏切ることなく、テーマは「顔のない死体」。
首切りとなると、当然焦点はホワイダニット(何故、首を切ったのか)になるが、舞台は閉鎖された空間で、被害者が入れ替わっているというのは考えづらい。
その上、その首が浮遊しているのが目撃されたり、切り取ったはずの首がまた戻される。
メインテーマである何故首を切ったのか、の真相はとても驚かされたし、思わせぶりなセリフの数々にもしっかりと意味があったのもよかった。
最後のどんでん返しにはそんなに驚きはなかったですが、とにかく最後まで”雰囲気”が素晴らしい一冊。
あくまで個人的好みとしてはここまでコテコテな雰囲気であれば探偵役は探偵がやってほしかったな。
エンタメ作品として、すごくすごく良い。
「首無館の殺人」というタイトルに惹かれる人であれば、絶対に楽しい1冊。良き良き。