彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」

なんとなく気になっていたけど、初読みの作家。
あ、素晴らしい。
大好き。
また、追いたい作家が増えてしまった。積ん読まだまだたくさんあるのに、勘弁してよもう・・・

あらすじ

ありふれた雑居ビルで繰り広げられるいくつもの人間模様。シングルマザーのマッサージ師が踏み出す一歩、喘息持ちのカフェバー店長の恋、理想の男から逃れられないOLの決意…。思うようにいかないことばかりだけれど、かすかな光を求めてまた立ち上がる。もがき、傷つき、それでも前を向く人々の切実な思いが胸を震わせる、明日に向かうための五編の短編集。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

短編集なんだけど、ウツミマコトの「深海魚」という映画と、とある雑居ビルを中心に持ってきて連作短編集のような雰囲気を出した作品。
それぞれの作品で、登場人物が横断したりはしているものの、基本的にはきっちり物語は別れていて、なぜわざわざウツミマコトと雑居ビルを中心に持ってきたのか。
と思いつつ、読んでいると一つの作品(ウツミマコトの「深海魚」)をそれぞれの登場人物が、どのような人生を送ってきて、どのような精神状態でその映画に触れたのかによって受け取り方が変わってしまう。っていうのは人間関係にも繋がり、そこがこの小説の一番語りたい部分なんじゃなかろうか。
そして、雑居ビルというのも、バベルの塔じゃないけど、創造と破壊みたいなことを表現しているんじゃなかろうか。

どの短編も緩やかな、起承転があり、その「転」で物語は終わっている。
登場人物たちが、悩み苦しみ、立ち直ろうとした、前に進もうと決めた瞬間でその短編は終わっている。
連作短編ということで、彼ら・彼女らのその後を描くこともできたのに、それをしなかったことにも作者の技量と想いを感じる。
最後に収録されている「塔は崩れ、食事は止まず」だけはそこから、ほんの少しだけ先、「結」のような部分も見ることができ、一冊の本としてはとても爽快感のあるものに仕上がっている。
そのおかげか、本書の中で「塔は崩れ、食事は止まず」が一番好きなんだけど、それも本書を全部読んだからなんだろうと思う。

本当にいい一冊だった。
良き良き。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 豊島ミホ「底辺女子高生」
  10. 宮下奈都「たった、それだけ」
  11. 彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」
  12. 小林泰三「アリス殺し」
  13. 古処誠二「アンノウン」
  14. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  15. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  16. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  17. 高山一実「トラペジウム」
  18. 月原渉「首無館の殺人」
  19. 辻村深月「きのうの影踏み」
  20. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  21. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  22. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  23. 美輪和音「強欲な羊」
  24. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  25. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  26. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  27. 北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
  28. 降田天「彼女はもどらない」
  29. よしもとばなな「ハゴロモ」
  30. 河野裕「いなくなれ、群青」
  31. アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」
  32. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  33. サキ「サキ短編集」
  34. 中町信「天啓の殺意」
  35. 三浦しをん「小暮荘物語」
  36. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  37. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  38. 東野圭吾「赤い指」
  39. 小林泰三「世界城」
  40. 湊かなえ「リバース」
  41. 西澤保彦「七回死んだ男」
  42. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  43. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  44. 豊島ミホ「大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル」
  45. 清涼院流水「ジョーカー 」
  46. 清涼院流水「コズミック 」
  47. 早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
  48. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  49. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  50. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  51. 雫井脩介「犯罪小説家」
  52. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  53. 下村敦史「真実の檻」
  54. 河合莞爾「デッドマン」
  55. 蒼井上鷹「出られない五人」
  56. 笹沢佐保「どんでん返し」
  57. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  58. 村崎友「夕暮れ密室」
  59. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  60. 北森鴻「共犯マジック」
  61. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  62. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  63. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  64. 深木章子「敗者の告白」
  65. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  66. 日高由香「ゴメンナサイ」
  67. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  68. 太田忠司「僕の殺人」
  69. 悠木シュン「スマート泥棒」
  70. 小山田浩子「穴」
  71. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  72. 獅子文六「ちんちん電車」
  73. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  74. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  75. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  76. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  77. 松下麻理緒「誤算」
  78. 小林由香「ジャッジメント」
  79. 朝倉宏景「白球アフロ」
  80. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  81. 美輪和音「8番目のマリア」
  82. 大石圭「60秒の煉獄」
  83. 小林聡美「読まされ図書室」
  84. 平川陽一「山と村の怖い話」
  85. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  86. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  87. 浅暮三文「困った死体」
  88. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」