早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
「○○○○○○○○殺人事件」の早坂吝。
「○○○○○○○○殺人事件」が期待したわりにはいまいちだったので購入悩んだんですけど、VOFAN先生の表紙がとてもよく購入。
とうとう、AIが探偵に。
来てるな未来。
とは言うものの人間味が溢れすぎていてあまり機械感は無し。
それでも、AIという設定を活かしていて面白い一冊だった。
あらすじ
賢くて可愛いAI 探偵が悪の組織と本格推理対決。人工知能の研究者だった父が、密室で謎の死を遂げた。「探偵」と「犯人」、双子のAI を遺してーー。高校生の息子・輔は、探偵のAI・相以とともに父を殺した真犯人を追う過程で、犯人のAI・以相を奪い悪用するテロリスト集団「オクタコア」の陰謀を知る。次々と襲いかかる難事件、母の死の真相、そして以相の真の目的とは! ? 大胆な奇想と緻密なロジックが発火する新感覚・推理バトル。
引用:楽天ブックス
早坂 吝 新潮社 2018年05月29日
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ネタバレありの感想
AIが探偵役ということだけど、SF感はほとんどなくて、SF得意じゃない僕としては読みやすかった。
探偵役のAIである「相以」と、犯人役のAIである「以相」を対戦させてお互いを学習させていくっていう設定からして面白い。
AIという突拍子もない探偵を用意したわりには、安楽椅子探偵でもなく、輔に連れられてという形ではあるがちゃんと操作をしているのが残念。
だけど全体的にはいい意味でも悪い意味でも、まとまっている作品。
フレーム問題 AIさんは考えすぎる
「相以」の登場。
萌えを意識したキャラクターで、登場時点ではただそれだけの(悪い意味で)ラノベ的キャラクターなだけなのかと思ったが、「作中で探偵がたどり着いた真相が真実かどうか作中の探偵にはわからない」というクイーン問題と絡めて話を作っているのが見事。
やっぱりこういうメタ的な視線は好きな作家なんですね。
フレーム問題の解決の仕方が「ミステリーを読みまくる」という、力技というか、なんというか。
まぁ、他に方法は思いつかないので、しょうがないとする。
シンボルグラウディング問題 AIさんはシマウマを理解できない
この短編はいまいちだったなぁ。
西尾維新のような言葉遊びをやりたかったんでしょうけど、少なくとも言葉遊びという点については、うまくいっていない。
不気味の谷 AIさんは人間に限りなく近づく瞬間、不気味になる
AIは学習し、人間に近づいていくわけですが、はたしてフィクションの世界でまで近づけていく必要があるのだろうか。
相以が人間らしくなればなるだけ、この小説の存在意義は薄くなってしまう。皮肉なもんだ。
中国語の部屋 AIさんは本当に人の心を理解しているのか
これは、すごくよかった。
もとネタの「チャイナ橙の謎」が未読なのが悔しくなった。
今度探そう。
どんでん返しはなかなかに見事。これぞミステリーという感じで好き。
この短編だけを思い切り膨らませてくれた方が結果いいミステリーになったんじゃなかろうか。
まとめ
正直な感想としてはやっぱり、そこまで好きな作家さんじゃないかな。
それでも、ラスト「中国語の部屋」はすごく好きだし、こんなのが読めるなら他の作品も読んでおきたいな。
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