率直に面白くなかった。
途中までは悪くないなと思えるんだけど、なんだかやけに目滑りしてしまい集中もできない。
それでも、結末はやけに気になって読了。
構成は悪くないというか、好きな方。
「僕の殺人」というタイトルも気が惹かれるいいタイトル。
5歳のときに別荘で殺人事件が起きた。母親は自室で首を括って自殺。父親は階段から転落して一生昏睡状態に。そして現場にいた僕は当時の記憶を失ってしまった。10年後、事件の真相を追うフリーライターの男が現れた。男は、事件には封印された秘密があり、それには僕自身が大きく関わっている、と仄めかす。いったいあのとき何があったのか? 予想外のトリックとみずみずしい感性で描く青春本格ミステリー。著者の長篇デビュー作待望の復刊!
引用:楽天ブックス
「僕の殺人」というタイトルは看板に嘘偽りあり、としか言えない。
そこがまず残念。
てっきり「罪と罰」のようなものかと思っていた。
小林の言う「君はいったい誰なんだ?」これに全てが集約されている小説で、そういう一個のテーマを中心に持ってきているのはとても好きだ。
でも、その小説の主テーマである「僕」が誰なのか、の部分を雑にしてしまっているのが一番ダメ。
まず、最初のドンデン返しとして、「僕」の父の雄一郎は”子供が作れない体”だった、というところから”叔父の真二郎が本当の父親だった。血縁者だから顔も似ているんだ。”という結論が一度下されたのに、大オチのドンデン返しとして”実は僕は誘拐された子供で、本当の”裕司はすでに死んでいた。”ってなんだよそれ。
じゃなんで雄一郎に顔が似てるんだよ。他人の空似かよ。
ここをこんな風に雑にしちゃっているのが本当にダメ。
わざわざ雄一郎に似ている描写を入れちゃってるんだから、そこはねぇ・・・
せっかく小説なんだから、容姿については書かないんでもいいじゃないですか。
そして、登場人物たちの行動がすごく浅はかというか、物語に都合よすぎる。
真二郎は雄一郎に起きてもらっちゃ困るハズなのに、随分と長い間死なせないよう努力しすぎ(真二郎の言うように長い時間苦しめたかったとしても)だし、雄一郎も誘拐した5歳の子供を自分の子供として育てようとする、なんて浅はかすぎる。
泉も自分のした過去の罪に対して軽すぎる。
と、残念な点が多かった。
全体的な雰囲気なんかは悪くないので、作者の他のを読んでみようかしらん。