時々訪れる「つまらない小説を読みたい」欲。
そんな中「スマート泥棒」というタイトルとダサい表紙で、悪い意味での期待値の高かった一冊。
なのにだ。
これが、いい意味で期待を裏切るものだった。
そこそこ良かった。
スマート泥棒ー略してスマドロは、閑静な住宅街で白昼堂々、鮮やかな手口で盗みを働き、世間を騒がしている。物語は、ある主婦がスマドロの話題から、自分の半生をどこの誰ともわからぬ電話の相手に延々と喋り続けるシーンから始まる。新たな語り手が登場する度に、彼女をとりまく複雑な人間関係が見えてくる。パズルのようなミステリーの最終章に待ち受ける真実とは!?第35回小説推理新人賞を受賞したデビュー作!
引用:楽天ブックス
あらすじには堂々と「ミステリー」の文字があるが、ミステリーを期待すると憤慨することになると思う。
推理的な要素もなければ、不思議な部分も全然ない。
「スマート泥棒」というタイトルではあるが、その泥棒自体にはあまりスポットライトも当たらないし、何より全然スマートな感じはない。
スマート泥棒、略してスマドロと関わった人々の話が狭い世界で少しづつ繋がっていく、という部分があらすじで言われている”パズル”的な部分なんでしょうね。
だが、登場人物たちの繋がりにも意外性はなく、面白みはない。
それでも、この小説がそこそこ良かったと思ったのは、キャラクターたちの癖の強さだったりセリフ回しの面白さがありつつ、ちょうどいいくだらなさとフィクション感がなんだか”悪くない”と思えてしまった。
時事ネタや芸能ネタなんかは未来に残すつもりがない作者の潔さを感じたし、実際繰り返し読むようなものでもなければ、遠い未来に読まれるような作品でもないんでしょう。
小説はただの娯楽という哲学でももっている作者なんでしょうかね。