橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」

なんだかんだ橋本紡って初読みな気がする。
もちろん、気になるのはいくつかあるんだけどなんとなく後回しにしてしまっている。
積ん読にもありそう。
表紙から感じる森絵都感や瀬尾まいこ感(要は児童文学っぽさ)に惹かれて読む事に。

面白かった。
とてもよかった。ほんわりといい感じ。
でもきちんと毒もあっていいバランスと、綺麗な文体。良き良き。

あらすじ

なぜか“教主さま”だという女の子を預かることになった。彩乃ちゃんといって、一見ごく普通の、小学五年生の女の子だー。花屋に勤める二十代の智佳子、進路に悩む高校三年生の徹平、東京から地方に越してきた小学五年生の佳奈が、彩乃ちゃんとの出会いで知った人生の奇跡。前に進むすべてのひとに捧げる物語。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

第○話と書かれていることからもわかるように連作短編集。
読み終わると全三話というのがちょっと残念なくらい、サクサクよめるし、もっと彩乃ちゃんのお告げを聞きたいと思ってしまった。

彩乃ちゃんが置かれた状況(なぜそれぞれの登場人物の家に預けられたのか)はあまり詳しくは語られない。
それでも、彩乃ちゃんの周りが大変なことになっているのは想像に難くないし、そんな状況でも泣き言も言わずにしっかりと生きている彩乃ちゃんのことを思うと、結構辛いものがあるし、悲しくもなってくる。
それでも、それぞれの話の主人公たちは彩乃ちゃんと彩乃ちゃんの不思議な力をとても自然に受け入れていて、その温度感がとても心地よい。
その不思議な力こそが彩乃ちゃんの周りの大人たちをおかしくさせているんだろうし、そんな力を隠したいと思うのが普通な気がする。
それでも、彩乃ちゃんは不思議な力を隠さないし、お告げもしてしまう。
そんなところこそが、彩乃ちゃんの不思議な所だし、強い部分だし、弱い部分でもあるんだろう。

彩乃ちゃんに出会ったことで、彩乃ちゃんと関わったことで、それぞれの話の主人公たちはもう一度前を向いたり、歩き出したりする。

与えてばかりの彩乃ちゃんだけど”ネイルとペンダントと指輪”をこの夏だけでもらったと嬉しそうに。
もちろんそれは、誰にどんな気持ちでもらったか、という点も嬉しいんだろうけど、すごく”女の子らしい物”という点がとても可愛らしくて愛おしい。

いい物語だった。
良き良き。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 宮下奈都「たった、それだけ」
  10. 彩瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」
  11. 小林泰三「アリス殺し」
  12. 古処誠二「アンノウン」
  13. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  14. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  15. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  16. 高山一実「トラペジウム」
  17. 月原渉「首無館の殺人」
  18. 辻村深月「きのうの影踏み」
  19. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  20. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  21. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  22. 美輪和音「強欲な羊」
  23. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  24. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  25. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  26. 北山猛邦「猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数」
  27. 降田天「彼女はもどらない」
  28. よしもとばなな「ハゴロモ」
  29. 河野裕「いなくなれ、群青」
  30. アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」
  31. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  32. サキ「サキ短編集」
  33. 中町信「天啓の殺意」
  34. 三浦しをん「小暮荘物語」
  35. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  36. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  37. 東野圭吾「赤い指」
  38. 小林泰三「世界城」
  39. 湊かなえ「リバース」
  40. 西澤保彦「七回死んだ男」
  41. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  42. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  43. 清涼院流水「ジョーカー 」
  44. 清涼院流水「コズミック 」
  45. 早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」
  46. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  47. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  48. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  49. 雫井脩介「犯罪小説家」
  50. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  51. 下村敦史「真実の檻」
  52. 河合莞爾「デッドマン」
  53. 蒼井上鷹「出られない五人」
  54. 笹沢佐保「どんでん返し」
  55. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  56. 村崎友「夕暮れ密室」
  57. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  58. 北森鴻「共犯マジック」
  59. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  60. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  61. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  62. 深木章子「敗者の告白」
  63. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  64. 日高由香「ゴメンナサイ」
  65. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  66. 太田忠司「僕の殺人」
  67. 悠木シュン「スマート泥棒」
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  70. 獅子文六「ちんちん電車」
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  79. 美輪和音「8番目のマリア」
  80. 大石圭「60秒の煉獄」
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