やけに濃いキャラクターが出ていたり、ストーリー的にも派手な部分が多く、大味というか外連味の強い一冊。
好き嫌いの別れる小説だと思う。
でも、こういうのはフィクションならではでいいですよね。
新進作家、待居涼司の出世作『凍て鶴』に映画化の話が持ち上がった。監督・脚本に選ばれた奇才・小野川充は独自の理論を展開し、かつて世間を騒がせた自殺系サイト「落花の会」を主宰していた木ノ瀬蓮美の“伝説の死”を映画に絡めようとする。一方、小野川に依頼されて蓮美の“伝説の死”の謎に迫り始めたライターの今泉知里は、事件の裏に待居と似た男の存在があると気づき―。その企み、恐怖は予測不能。待望の文庫化。
引用:楽天ブックス
ミステリーとしてはイマイチ。
というか、ミステリーとして書いていないんじゃないかな。それこそ、犯罪小説として書かれた一冊なんじゃないかな。
最後までちゃんとした謎解きがなかったのも、そういうことだったんじゃないかな、と。
もちろん、物語中にずうっと大きな「謎」があって、その謎を中心に物語は進んでいく。
小野川のキャラクターが少し突飛すぎて、読んでいてちょっと疲れるくらい。
でも、小野川のパワーによって物語がどんどんといい方にも悪い方にも進んでいくのはなかなか、良き。
待居が小野川に対してどんどんと強く嫌悪感を覚えていくのに、映画化の話をストップさせないことに都合が良すぎるような気がずうっとしていたんだけど、その答えが「小野川の撮る『凍て鶴』を見たかった」というもので、無理やりそうだけど、しっかりと納得の出来る力強さがあってすごくよかった。
そしてラスト、後悔された映画を見に来た待居と「落花の会」を追っている刑事との会話。
ここがかっこよかった。
それまでのイマイチな点とか全部ぶっ飛ばしていい小説だったと思わせるようなかっこよさがあった。