思ってた感じとちょっと違った。
期待していた感じとちょっと違った。
それでもやっぱり満足。三浦しをんさすがだ。
三浦しをんは愛おしいキャラクターを生み出すことに長けている。
ある側面から見ると、ダメな人も、また別の視点から見ると、愛おしい側面がちゃんとあって、そういう人間の持つ多様性、人間と人間の関係性の多様性を書くのがとてもうまい。
小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘。そこでは老大家木暮と女子大生の光子、サラリーマンの神崎に花屋の店員繭の四人が、平穏な日々を送っていた。だが、一旦愛を求めた時、それぞれが抱える懊悩が痛烈な悲しみとなって滲み出す。それを和らげ癒すのは、安普請ゆえに繋がりはじめる隣人たちのぬくもりだった…。
引用:楽天ブックス
素敵な愛らしいキャラクターというよりは、愛らしいキャラクター通しの関係性。って言った方が正確な気がする。
前に友達が言っていた「男はキャラクターに萌えるけど、女は関係性に萌えるんだ」ってのがまさしく三浦しをんだな、と。
一応短編集という体裁だし、それぞれを短編として読むこともできるけど、それでもやっぱり本書「小暮荘物語」は群像劇の長編、と思った方が正しいと思う。
舞台は小暮荘で、テーマは性。
一編目の「シンプリーヘブン」ではそこまで性が中心のテーマになっていないように見えるけど、二編目の「心身」で、わかりやすく性を中心に持ってくる。そしてそれは、最後まで続く。
それでも、ジメッとした感じはなく、どこかドライな読書感なのは、キャラクターがどれも少しぶっ飛んでいるからかもしれない。
ラストの「嘘の味」はさすがに小暮荘から離れすぎな気もするけど、みんなが気になる並木のその後をきちんと描いてくれるのはさすが三浦しをん。
変わった人たちばかりが集まる小暮荘。
ただそれだけの一冊なのに、すごく愛おしい。