大山誠一郎「密室蒐集家」

「密室蒐集家」という探偵が活躍する当然密室だらけの連作短編集。
色々と超人的な”密室蒐集家”と名乗る探偵。
そりゃもちろん、密室ばかりの短編集となりますが、密室を作ることよりも、密室をどう解明するのか?というのに注力している。

本書に出てくる警察がちょっと無能すぎるのが気になりますが、楽しい一冊。

あらすじ

鍵のかかった教室から消え失せた射殺犯、警察監視下の家で発見された男女の死体、誰もいない部屋から落下する女。名探偵・密室蒐集家の鮮やかな論理が密室の扉を開く。これぞ本格ミステリの醍醐味!物理トリック、心理トリック、二度読み必至の大技…あの手この手で読者をだます本格ミステリ大賞受賞作。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

柳の園

「腕時計の形に日焼けしているから腕時計をしていたはずだ」と思い込みすぎだったり、拳銃の入射角に無頓着すぎたりする警察の無能さがどうしても気になる。
だが、上着を取り替えて銃痕の数をごまかしたのはシンプルながらいいトリックですね。

少年と少女の密室

性別誤認というか、人物誤認の叙述トリックもの。
それ自体はそこまで珍しいものではないんでしょうけど、それが被害者でそれによって密室を作り出すことになるというのはとても面白い。
ですが、叙述部分としてはとてもわざとらしくて、読者としてはすぐに引っかかる部分があると思う。
そしてこの短編でも被害者を取り違えたままの警察の無能さが気になる。

死者はなぜ落ちる

密室ができる過程やそれを解決していく様はとても良き。
だけどこの短編でも警察が無能すぎる。
飛び降り死体が足から落ちたのか、頭から落ちたのかすら確認していない。
そういうのがあまりに探偵にとって都合が良すぎて、どうしても気になってしまうし、探偵である密室蒐集家がすごいのではなく、警察がひどすぎるだけ、としか思えなくなってしまう。
ドラマチックで面白いだけでにもったいない。

理由ありの密室

本書のベスト。
密室蒐集家による密室の分類と”別解潰し”から”カモフラージュ”というところまでの推理の飛躍のすごさたるや。
それも、密室蒐集家という超常的な存在だからこそ、納得させられる。
”カモフラージュ”されたということは、鍵を飲み込んだのは”ダイイングメッセージ”となるのもとても自然。
そのダイイングメッセージが”胃の中に鍵”で”田鍵月(たかぎつき)”というのはちょっと笑ってしまいましたが、良き良き。
いい短編だった。

佳也子の屋根に雪ふりつむ

最後の短編は雪の密室。
香坂の伯父の死がまさか話の主軸に関わってくるとは思わなかった。
見事な展開。
ただ、ブーツの件など都合良すぎる感じもありつつ。

まとめ

ご都合主義な部分が多かったり、警察があまりに無能すぎたり、全体的には不満が多い。
それでもやはり密室蒐集家という存在そのものが最高にかっこよくて楽しい。
探偵小説はかっこいい探偵がいればそれだけで楽しい。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 宮下奈都「たった、それだけ」
  10. 小林泰三「アリス殺し」
  11. 古処誠二「アンノウン」
  12. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  13. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  14. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  15. 高山一実「トラペジウム」
  16. 辻村深月「きのうの影踏み」
  17. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  18. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  19. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  20. 美輪和音「強欲な羊」
  21. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  22. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  23. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  24. 降田天「彼女はもどらない」
  25. よしもとばなな「ハゴロモ」
  26. 河野裕「いなくなれ、群青」
  27. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  28. サキ「サキ短編集」
  29. 中町信「天啓の殺意」
  30. 三浦しをん「小暮荘物語」
  31. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  32. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  33. 東野圭吾「赤い指」
  34. 小林泰三「世界城」
  35. 湊かなえ「リバース」
  36. 西澤保彦「七回死んだ男」
  37. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  38. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  39. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  40. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  41. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  42. 雫井脩介「犯罪小説家」
  43. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  44. 下村敦史「真実の檻」
  45. 河合莞爾「デッドマン」
  46. 蒼井上鷹「出られない五人」
  47. 笹沢佐保「どんでん返し」
  48. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  49. 村崎友「夕暮れ密室」
  50. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  51. 北森鴻「共犯マジック」
  52. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  53. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  54. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  55. 深木章子「敗者の告白」
  56. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  57. 日高由香「ゴメンナサイ」
  58. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  59. 小山田浩子「穴」
  60. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  61. 獅子文六「ちんちん電車」
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  74. 浅暮三文「困った死体」
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