神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」

天才とミステリー(特に新本格)の相性はとても良い。
探偵として登場しても、その探偵が簡単に解けない謎を演出できたり、超人的な推理力を持たせることができる。
被害者としてはなぜ天才がその犯罪の被害者になってしまったのか、など新たな謎を追加することができる。
犯人として登場すると、突飛なトリックを作り上げることや天才をやっつけるカタルシスを演出できる。

あらすじ

高校三年生・来光福音のもとへ届いた、自殺した同級生からの手紙。彼は「東高三人の天才」の一人で、見た目も人格も完璧な男の子。「僕を殺した犯人を見つけてほしい。犯人は東高の人間です」と書かれた遺書に導かれ、福音は「人の心が読める女」と呼ばれるもう一人の天才・沙耶夏と事件を調べる。なぜ非凡な少年は凡人の少女に想いを託したのか?せつない謎解きが始まる。
引用:Amazon「校舎五階の天才たち」

小説内では沙耶夏って名前はほとんど出てこないです。苗字の「加藤」で呼ばれてます。
あらすじ書いた人小説読んでないんじゃない?

ネタバレありの感想

いきなり全部のネタバレしますと、この小説には天才と呼ばれる人物が3人(良哉・加藤さん・渡部)出てきてそれぞれ、探偵役、被害者役、犯人役となる。

あくまでメタ的な推理になってしまうが、被害者が良哉で、加藤さんが探偵役、渡部が本筋に全然絡んでこないとなると犯人か、せめてそこに繋がる何かを持っているというのは確実になってしまう。
しかも、良哉はあくまで自殺で、良哉の手紙から「自殺を促した誰かがいるはずという未確定なものに対し、犯人を絞るための要因が「犯人だったら良哉が電車に飛び込むところを見たかったはず」というこれまた未確定な予測からのアリバイや目撃情報を探すだけなんで捜査パートはいまいち盛り上がるに欠けたまま。
それでも、本書「校舎五階の天才たち」が面白かったのは、これあくまでミステリーの皮をかぶった青春小説だった。

天才と言っても、本書に出てくる天才たちは例えば森博嗣や西尾維新が描くような天才とはちょっと違い、あくまで学校の勉強や運動、芸術関係に優れているという程度であり、そこまでのファンタジーを感じるほどではない。
そこに、「天才も20才すぎればただの人(これも凡人の嫉妬から出た言葉なんだろうけど)」みたいな考えに基づく、学校という特殊で閉鎖的な枠組みの中での才能のあり方なんかを描いていてとても良かった。

ミステリー的な謎としては、犯人が誰、というよりも「なぜ良哉は来光福音に手紙を残したのか」という”ホワイダニット”もの。
良哉の暗い過去が暴かれ、この物語がどう着地するのかと不安になっていたが、結末は、唯一の本当の天才である渡部に友達を作るという、意外なほど爽やかに青春したものだった。
オチがよかったので、ラストあたりをもうちょっとちゃんと描いてくれるとよかったな。

良き良き。

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