彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」

盛り込みすぎ。
夏休み、地震でクローズドサークルになった病気で亡くなった同級生がお化けとして現れると噂のある寮に残された7人の女子。そこに教師が殺人鬼となって襲いかかる!それに、幼馴染の男子のこともなんだか気になるし・・・・
という内容だけど、無理やりにジャンル分けするとしたら「青春群像劇」。
そう、盛り込みすぎなんである。
でも、この感じ好きだ。
面白かった。

あらすじ

高校最後の夏休み。「ある理由」から帰省せずに女子寮に残った七瀬は「死んだ女生徒の幽霊」の噂を耳にする。一方同じ居残り組の双子・日向と美夜子は男性教師・神崎が女性を撲殺する瞬間を目撃。狂気に満ちた神崎に追いつめられる少女たち。そのとき死んだ女生徒の親友と名乗るあかりが寮に現れ―。叙情的かつスリリングな、青春群像ミステリ。
引用:Amazon「少女は夏に閉ざされる」

ネタバレありの感想

視点がコロコロと代わるうえ、事件は盛り沢山で起こるものの、そこまで読みづらいものにはなっていないのはキャラクター性の強い登場人物のおかげでしょう。

一つ一つのエピソードをもっと掘り下げるべきだって普段なら思うんでしょうけど、本書でそんなことしてたら5冊分くらいにはなってしまいそうだ。
こういうスピード感や雑多な感じ、これはこれで一つの表現方法なんだろうと思えた。
だけど残念な点もあって、途中途中で挿入される繭の独白の隠れ蓑として、双子のいざこざが存在しているのがちょっと勿体ない。
このメンバーの中で双子が少し浮いているというか、離れた場所に存在してしまっているんだよな。
この双子の扱いをもっとメインに絡めることが出来ていたら、この叙述トリックに深みが出たと思う。

デビュー作ということもあって、きっと書きたいことが、描きたい世界がたくさんある作家さんなんでしょう。
そのことは素晴らしいことだと思うし、それを一作にまとめ上げようとしたチャレンジ精神も素晴らしい。
そして、恩田陸や辻村深月からの影響を強く感じる。
本や、小説が好きなんだろうな。
この小説への愛は作中での七瀬からも感じることが出来る。

あくまで個人的な好みとしては名前の付け方をもっと煮詰めて欲しい。
日向というキャラクターから日向感は無いし、美夜子から夜を感じない。
というか、双子の名前は逆だったほうがすんなり受け入れられるくらいかもしれない。
あくまで個人的な好みだけど。
他のも読んでみよう。
二作目以降もこの勢いのまま書かれているといいな。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 古処誠二「アンノウン」
  8. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  9. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  10. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  11. 高山一実「トラペジウム」
  12. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  13. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  14. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  15. 美輪和音「強欲な羊」
  16. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  17. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  18. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  19. よしもとばなな「ハゴロモ」
  20. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  21. サキ「サキ短編集」
  22. 中町信「天啓の殺意」
  23. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  24. 東野圭吾「赤い指」
  25. 湊かなえ「リバース」
  26. 西澤保彦「七回死んだ男」
  27. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  28. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  29. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  30. 下村敦史「真実の檻」
  31. 河合莞爾「デッドマン」
  32. 蒼井上鷹「出られない五人」
  33. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  34. 小山田浩子「穴」
  35. 北森鴻「共犯マジック」
  36. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  37. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  38. 日高由香「ゴメンナサイ」
  39. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  40. 獅子文六「ちんちん電車」
  41. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  42. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  43. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  44. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  45. 松下麻理緒「誤算」
  46. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  47. 美輪和音「8番目のマリア」
  48. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  49. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  50. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」