よしもとばなな初読み。
なんとなく(多分作家名からの印象で)、軽い恋愛小説を書いているだけの人、みたいなイメージを持っていた。
知り合いに「確かに恋愛も書くけどそれだけじゃないよ」と言われて挑戦。
もし肌に合わなくても薄いからダメージ少ないしね。
途中までは「ちょっと肌に合わないかも・・・」なんて思いながら読んでいたんだけど、ページを捲る手は止まらないし、どんどん没入していった。
面白かった。
失恋の痛みと、都会の疲れをいやすべく、ふるさとに舞い戻ったほたる。大きな川の流れるその町で、これまでに失ったもの、忘れていた大切な何かを、彼女は取り戻せるだろうか…。赤いダウンジャケットの青年との出会い。冷えた手をあたためた小さな手袋。人と人との不思議な縁にみちびかれ、次第によみがえる記憶―。ほっこりと、ふわりと言葉にくるまれる魔法のような物語。
引用:楽天ブックス
ストーリーとしては8年間不倫を続けたが、別れを告げられた主人公のほたるが故郷に戻り、祖母の喫茶店を手伝いながら友人に救われて見事立ち直るというありがちと言えばありがちなもの。
喫茶店の店内を欄で埋め尽くすおばあちゃんや、無許可でインスタントラーメンを出す店をやっているみつるくんや、昔に親の再婚話が出たときに姉妹になりかけた河童が友達のるみちゃんなど、キャラクターは結構尖ったキャラが多く、順番としは逆なんでしょうけど伊坂幸太郎に似たものを感じた。
そんな派手めなキャラクターにも関わらず大きなドラマは(小説の時間軸の中では)おきない。
過去に、大きなバス事故やほたるの失恋などはあるものの、それは小説内ではあくまで過去のものとなっている。
そして、そんな過去にとらわれているのが主人公であるほたるや、みつるくんのお母さん。
そんな彼女らに前を向かせるのが、友人や「スピリチュアル」なもの。
本書では、不思議なことや不思議な力を持つ人々をすごく自然に、地続きに描いていて、もしかしたら「占い」や「スピリチュアル」なものが苦手な人は嫌悪感を覚えてしまうかもしれない。
もちろん、本書「ハゴロモ」はあくまで小説なんだけど、ファンタジーにするわけでもないバランス感覚で本書のキャラクター達の中ではとてもリアルに存在している感じがする。
その「スピリチュアル」なものの扱いも誰かを少し前向きにするために存在しているだけで、大きなドラマや不可思議な出来事を生んだりすることもない。
それでも、昔あった不思議な夢や奇妙な縁、そんなものがほたるを救い、みつるくんのお母さんをも救う。
これは素敵な青春小説だ。
綺麗なだけの文章ではなく、どこかに引っかかりのようなものを感じてそこがハマる要因になるんじゃなかろうか。
オススメされた、よしもとばなな「王国」も早く4巻を買って読みたい。