やけに色々な所で評判が良く、それでも翻訳ものが苦手ということで手が伸びていなかった本書「サキ短編集」。
すごくよかった。
最初の方はいまいち世界に入り込めず目滑りしつつ読んでいたのだが、どんどんとサキの世界に沈んでいき、繰り返し読了後すぐにもう一度頭に戻り、何編かリピートしてしまった。
確かにすごく良き。
ビルマで生れ、幼時に母と死別して故国イギリスの厳格な伯母の手で育てられたサキ。豊かな海外旅行の経験をもとにして、ユーモアとウィットの糖衣の下に、人の心を凍らせるような諷刺を隠した彼の作品は、ブラックユーモアと呼ぶにふさわしい後味を残して、読者の心に焼きつく。「開いた窓」や「おせっかい」など、日本のSFやホラー作品にも多大な影響をあたえた代表的短編21編。
引用:楽天ブックス
どれもこれもブラックユーモアにあふれた短編集。
短編集というよりはショートショート集って言った方がイメージが近いと思う。
どれもこれも、どことなくブラックな結末なんだけど、決して単調ではなくとてもバラエティに富んでいるし、シチュエーションなどの違いで全然違った印象を受け楽しい。
情景描写に特別力を入れているわけでもななさそうな上、もちろん翻訳ものを読んでいるので、作者の細かな描写は理解できていないと思うのですが、それでもどの短編も情景がきれいに浮かび、その上(僕にとっては)どことなく楽し気でカラっとした雰囲気を感じた。
ブラックな結末と言ったが、読んで陰鬱な気分になるようなことはなく、ニヤリとしてしまうようなものばかり。
ユーモアのバランスや空気感がとても良いんだろうな。
一つの短編を取り立てて良かった!というよりは、自分もそうだったようにいくつもの短編を読んでいるうちに知らず知らずのうちにハマって行ってしまうようなものだと思うので、「この短編がよかった」なんてあんまり言いたくないんだけど、それでも「話上手」が素晴らしく良く、この短編で「サキすげえいいな」って思ったのも確か。
列車の中で騒がしい子供たちに話を披露するだけなんですが、その話自体も良ければ、その結末もまた素晴らしい。
子供の純粋さや道徳観、そんなものをスカっと笑い飛ばす傑作です。
良き良き。