積ん読を消化したくて、早く読める湊かなえを。
イヤミスの女王と呼ばれる彼女ですが、少し前からイヤミス以外もたくさん書いているし、本書「リバース」もイヤミスでは無い。
イヤミスの女王と言うよりは実写化の女王じゃなかろうか。
やけに実写化の多い湊かなえ。
これもドラマ化されているようだ。
と言うよりは、ドラマ化する前提で書いたんじゃなかろうか。
深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある”闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。
引用:楽天ブックス
現代→過去→現代という構成がすごく良き。
よくある構成だけど、この話にすごくよくあっている。
大学時代である、過去の話はキラキラした青春感がしっかりとあるし、現代からそこを振り返る感じもとても良き。
こういう所がドラマに向いているんだろうな。
ラスト、実際に広沢を殺してしまったのは自分だったと気づいてしまう深瀬。
なんとなくそうなるんじゃないかな、と思いつつ読んでいたのでそこまで衝撃はなかったけど、みんなが蕎麦を食べているときにカレーを食べに行っていた、というのを広沢のマイペースエピソードから、みんなに気を使った結果だったといういいエピソードに持っていき、そのため深瀬が気づかずに蕎麦の蜂蜜を飲ませてしまう、という小さなどんでん返しを2つ用意した点は見事。
伏線としてもとても自然な上、印象深いエピソードにも絡めていて良かった。
深瀬にとって初めての恋人である美穂子との絡みはちょっと都合よすぎてまるでラブコメのよう。
普段の湊かなえさんなら、美穂子を悪女のままで終わらせていたんじゃないかな。
こういう所で、ドラマ化の影響を感じた。
美穂子が最終的にはすごくいい人みたいな描かれ方なんだけど、深瀬を試す行動や谷原をホームから突き落とすっていうのはさすがにやりすぎで、美穂子は美穂子で罪を償うべきなんだけどな。
コーヒーや蜂蜜、その他飲食に関わる描写が細かく、そこがトリックというか深瀬や広沢の人柄、広沢の死に深く関わっている描写や構成力はとても上手。
この構成でいつもの湊かなえの実力が出ていたら結構な名作になっていたと思う。
良き良き。