短編の評判のいい蒼井上鷹。
長編の1作目となる本書「出られない五人」もアマゾンとか見ると評判はいまいち。
ですが、こういうドタバタコメディや娯楽としてのミステリー、僕は好きですよ。
〜予測不能の密室エンターテインメント!
ワケあり男女五人+二つの死体+闖入者。
廃ビルから「出られない」のか「出たくない」のか!?地下のバーに男女六人と死体が二つ。急逝した作家を偲び、彼の馴染みだった店の跡で一晩語り明かそうという企画のはずだったのに、死体が出てくるわ、闖入者まで出てくるわで、事態は混迷の極みに。な
引用:楽天ブックス
急逝した作家アール林野の愛したバー「ざばずば」。
その「ざばずば」が取り壊されるということで、集まった訳ありで「出たくない」五人。
と、舞台や一時期流行った映画なんかでありそうなシチュエーションコメディ。
アール林野ってアル中ってことか。
こういうくだらない駄洒落いいですよね。ミステリーっぽい。
「ざばずば」にも何か元ネタがありそうだけどさっぱりわからず。
アール林野のモデルは露骨に中島らも。
実は中島らもってまだ未読なんだよな。愛されている作家だし、読んでみなくちゃな。
閑話休題。
ミステリーというよりは本筋はシチュエーションコメディ。
そこに正体不明の死体を一つ置くことで、謎を一つ作っているだけ。
この死体を舞台装置として話の展開を大きく動かしたいんだろうけど、それがイマイチうまく行っていない感じ。
もっと、五人の中でドタバタしてくれたらよかったかな。
とは言うものの、読み心地はとても軽く、結構楽しんで読めた。
ラストの洋平と管理人の件はいきなり過ぎるうえ、馴染みの無いキャラクターすぎて無理やり落とした感じが否めない。
こんなラストを付けるくらいなら、解決しないままの方がまだよかったのでは?と思うくらい。
それよりも、幸が最後になぜ自殺を試みようと思ったのか、そっちの謎を残したのはなんでなんだろう。
完全に不要なエピソードじゃないかな。
作中作であるアール林野のコラムなんかも結構良くて、そっちでも楽しめた。