矢部嵩「紗央里ちゃんの家」

んー、さすがにどうよ。
こういうのが好きな人がいるのもわからなくは無いけど、僕は全然ダメ。
僕は角川自体と相性がよく無いかもしれない。
角川ホラーとはさらに相性がよく無いかもしれない。

あらすじ

叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと知らされた。小学五年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕もエプロンも真っ赤に染まり、変な臭いが充満していて、叔母夫婦に対する疑念は高まるけれど、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、何を訊いてもはぐらかされるばかり。洗面所の床から、ひからびた指の欠片を見つけた僕は、こっそり捜索をはじめるが…。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
引用:Amazon「紗央里ちゃんの家」

ネタバレありの感想

不思議で不穏な空気感。
独特なテンポ。
子供の視点からの純粋さ故の残酷さ。
などを演出したいのでしょうけど、とにかく僕には合わなかった。
このテンポや空気感が合えば「よくわからないけどそれがすごく楽しい」ってなるんだとは思う。
作者が本当に狂っているのか、筆力が低く、狂ったように見えてるだけなのか。
僕は後者の印象を受けてしまった。

とにかく主人公である「僕」のキャラクターがひどい。
子供っぽい部分を見せて純粋さ故の残酷さを演出したいのにも関わらずやけに大人っぽい言葉を使ってしまったり、そもそも下品な言葉使いだったりと、視点人物に一貫性がないので、その目を通してみるこっちも「僕」のキャラクターが変わるたびに冷静になってしまって全然気持ちが入らなかった。

せっかく大落ちとしての紗央里ちゃんを登場させているのに、そこのタイミングがとにかく勿体無い。
その前で一度読者を安心させるべきなんじゃなかろうか。
緊張と緩和と緊張。
作中やけに多かったセリフの羅列なんかはやっぱり小説としては退屈なシーンになりがちだ。
最後の最後、紗央里ちゃんの登場部分だけにもってくるべきだったと思う。
なのに、そこはやけにすっくり入って来ちゃう。
そこをギリギリまで引っ張れるのが小説の良さなんだけどな。

悪口としてこういうことをいうのはよく無いと思うけど、山田悠介以降の作家だな、という感じ。

2019年 年間ベスト

  1. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  2. 平山夢明「ダイナー」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 古処誠二「アンノウン」
  8. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  9. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  10. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  11. 高山一実「トラペジウム」
  12. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  13. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  14. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  15. 美輪和音「強欲な羊」
  16. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  17. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  18. サキ「サキ短編集」
  19. 中町信「天啓の殺意」
  20. 東野圭吾「赤い指」
  21. 湊かなえ「リバース」
  22. 西澤保彦「七回死んだ男」
  23. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  24. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  25. 下村敦史「真実の檻」
  26. 河合莞爾「デッドマン」
  27. 蒼井上鷹「出られない五人」
  28. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  29. 小山田浩子「穴」
  30. 北森鴻「共犯マジック」
  31. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  32. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  33. 日高由香「ゴメンナサイ」
  34. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  35. 獅子文六「ちんちん電車」
  36. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  37. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  38. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  39. 松下麻理緒「誤算」
  40. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  41. 美輪和音「8番目のマリア」
  42. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  43. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」