中町信「天啓の殺意」

「模倣の殺意」で有名な中町信の「天啓の殺意」。
「殺意」シリーズということで「暗闇の殺意」という短編集を去年読んでいたものの、「模倣の殺意」ほどの感動はなく、一発屋なのかな、とか思いつつ本書も読む。

すばらしかった。
とても楽しかった。

あらすじ

柳生照彦から持ち込まれた犯人当てリレー小説―柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道由起子に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。要するに作家同士の知恵比べをしよう―という企画は順調に進行するかに見えたが…。問題編を渡したまま、柳生は逗留先から姿を消し、しかもその小説は半年前の実在事件を赤裸々に綴ったものだった。全面改稿決定版。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

本書の中でも言われているけど、作中作となる「事件」の章を読んだ段階ではとてもじゃないけど面白いとは言えない。
物語が進んで行くと、犯人と思われた「片桐洋子」が殺されてしまうが、そこまでもなんとなくよくあるような展開。
にも関わらずなんとなくどことなく、不穏な空気でどんどん満たされてきてどんどん楽しくなっていく。
とにかく犯人候補が二転三転していく物語で、どこに落とすんだろうと、どんどん楽しくなっていく。

ラストは本当に騙された。
作者の作風に詳しいとバレバレだって意見もあるみたいだけど、僕は見事に騙されてしまった。気持ちよかった。
伏線というかヒントはしっかりと描かれていた。
・お礼を含めてもコピー代として1万円は多すぎる。
・「アクロイド殺し」についての言及。
・花積の病気。
特に、コピー代については、読んでいる時に「?」と思ったし、「なんか雑な部分だな」とも思った。
にも関わらず、原稿がもっとあった、というのは最後の最後まで気付けなかった。
しかも、そこからもう一個展開があり、柳生が犯人である花積を操っていたとかなんとか、蛇足と思わなくも無いけど、本書のほとんどが作中作であったこととかから、柳生が神のような存在としているかのような印象を受けて、本書に幻想小説的な雰囲気も追加されている。

見事。
完敗。

2019年 年間ベスト

  1. 平山夢明「ダイナー」
  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 今村昌弘「屍人荘の殺人」
  8. 市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」
  9. 宮下奈都「たった、それだけ」
  10. 小林泰三「アリス殺し」
  11. 古処誠二「アンノウン」
  12. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  13. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  14. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  15. 高山一実「トラペジウム」
  16. 辻村深月「きのうの影踏み」
  17. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  18. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  19. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  20. 美輪和音「強欲な羊」
  21. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  22. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  23. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  24. 降田天「彼女はもどらない」
  25. よしもとばなな「ハゴロモ」
  26. 河野裕「いなくなれ、群青」
  27. 神宮司いずみ「校舎五階の天才たち」
  28. サキ「サキ短編集」
  29. 中町信「天啓の殺意」
  30. 三浦しをん「小暮荘物語」
  31. 柾木政宗「朝比奈うさぎの謎解き錬愛術」
  32. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
  33. 東野圭吾「赤い指」
  34. 小林泰三「世界城」
  35. 湊かなえ「リバース」
  36. 西澤保彦「七回死んだ男」
  37. 麻耶雄嵩「貴族探偵対女探偵」
  38. 橋本紡「彩乃ちゃんのお告げ」
  39. 歌野晶午「正月十一日、鏡殺し」
  40. 西本秋「闇は僕らをつないでいる」
  41. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  42. 雫井脩介「犯罪小説家」
  43. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  44. 下村敦史「真実の檻」
  45. 河合莞爾「デッドマン」
  46. 蒼井上鷹「出られない五人」
  47. 笹沢佐保「どんでん返し」
  48. 貫井徳郎「ドミノ倒し」
  49. 村崎友「夕暮れ密室」
  50. 澁澤龍彦「秘密結社の手帖」
  51. 北森鴻「共犯マジック」
  52. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  53. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  54. 大山誠一郎「密室蒐集家」
  55. 深木章子「敗者の告白」
  56. 清涼院流水「全日本じゃんけんトーナメント」
  57. 日高由香「ゴメンナサイ」
  58. 青柳碧人「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」
  59. 小山田浩子「穴」
  60. 長崎尚志「闇の伴走者 醍醐真司の博覧推理ファイル」
  61. 獅子文六「ちんちん電車」
  62. 堀内公太郎「スクールカースト殺人同窓会」
  63. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  64. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  65. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  66. 松下麻理緒「誤算」
  67. 小林由香「ジャッジメント」
  68. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  69. 美輪和音「8番目のマリア」
  70. 大石圭「60秒の煉獄」
  71. 小林聡美「読まされ図書室」
  72. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」
  73. 矢部嵩「紗央里ちゃんの家」
  74. 浅暮三文「困った死体」
  75. おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」