「そして、バトンは渡された」は2019年本屋大賞受賞の瀬尾まいこ。
「そして、バトンは渡された」についてはまだ未読。
瀬尾まいこは好きな作家だ。
さらっと読めて、落ち込みたくないときや温かい気持ちになりたいときに読むんだけど毎回その通りにしてくれる。
とにかくキャラクターの作り方、描き方が良き。
本書「戸村飯店 青春100連発」もヘイスケとコウスケという良いキャラクター2人の話。
「ごめんください。どなたですか?戸村飯店の兄弟、ヘイスケとコウスケです。おもろくってほんますみません。ありがとう」大阪下町の中華料理店で育った兄弟は見た目も違えば性格も違う。人生の岐路に立つ、どこか不器用で誠実な2人をユーモラスに描く。東京と大阪、離れてみえる絆。笑いと笑いと涙で包む、瀬尾まいこの世界。坪田譲治文学賞受賞の傑作青春小説登場!
引用:楽天ブックス
日本って面白い国だな、いい国だな。ってまず思った。
本書「戸村飯店 青春100連発」の舞台は大阪と東京。
大阪で生まれ育ったヘイスケとコウスケの兄弟。
ヘイスケは高校卒業を期に大阪から逃げるように東京へ。
本書はその1年間の兄弟を描く。
兄弟ものなのに、兄弟の絡みが異常に少ない。
東京と大阪で遠く離れているけど、心がつながっているとかそんなありがちなものでもなく、兄弟だからこそのよそよそしさが残ったまま。そもそもこの兄弟があんまりしゃべらない。
かと言って昔のいい思い出を抱えて・・・とかそんなでもない。
「仲いいの?」「悪くはないけど・・・」って感じの兄弟そのまんま。
無関心で無干渉に近い。
そんな兄弟の距離が近づいていくってだけの話でもなく、やっぱり地元が最高やなってだけの話でもなく、ヘイスケとコウスケにとっての無駄なことが有意義だった1年間の話。
高校を卒業し東京にでた兄のヘイスケの世界はきちんと広がっていって、弟のコウスケの世界は学校と家で完結していて、その対比が本当に見事。
そして来年コウスケも大阪を出て世界がどんどん広がっていくのが簡単に想像できる。
ヘイスケの「連れ」の古嶋とのエピソードや、年上の恋人アリさんとのエピソードや、コウスケの片思いの相手、岡野とのエピソードや友達の北島くんとのエピソードもそれぞれ最高。まさに青春。
だけどやっぱりラストのヘイスケのギャグが鳥肌ものだった。
良き良き。