高橋由太「紅き虚空の下で」

本書「紅き虚空の下で」の作者である高橋由太は時代小説畑の人だそうで、そちらは全く読んだことないです。
ということで初読みの作家さん。
普段、時代小説を書いている作家ということで、勝手なイメージで固めなミステリーを想像していましたが、見事に裏切られた。
自分の想像力の少なさ、イメージの貧困さ、凝り固まった固定概念を恥じた。

本書を読む限りでは時代小説の匂いは全く感じないのは、僕が時代小説を知らないからなんだろうな。
本書を読んで時代小説にも興味を持てた。
感謝。

あらすじ

時代小説作家として人気の高橋由太は、本格ミステリーでも驚くべき傑作を書き上げていた! オカルトマニアの少女が絞殺され、両手首を切り落とされた姿で発見された。奇想天外な設定とひねりの利いた展開、絶妙なユーモア感覚が光る表題作。人里離れた山奥に捨てられた少年を襲う残酷で哀しい運命を描く「兵隊カラス」。一読、忘れがたい強烈な印象を残す全4編。
引用:楽天ブックス

ネタバレありの感想

4編の短編集で、そのどれもが変化球。

紅き虚空の下で

1編目からして、びっくりした。
まさかバカミスだとは。「バカなミステリ」ではなくて、「そんなバカな!」って感じのバカミス。
導入部分では、不思議な言葉使いの子供とその教師との会話で、「メタルフィッシュ」というUMA(作中ではUMCと呼ばれている)の存在が匂わされ、「メタルフィッシュ」が存在するかどうかが物語の軸になるのかと思いきや、その子供が殺されて、容疑者・探偵役としてその「メタルフィッシュ」が登場!しかも特殊能力持ち。
そんなバカミスでありながら、ミステリーとしては割とストレートな作り。
面白い。

蛙男島の蜥蜴女

UMAが登場した1編目に続いて今度は奇怪な蛙男島を舞台にしたホラーミステリー。
違和感と恐怖感のある雰囲気作りがとても良き。
筆力高い作家さんなんでしょう。時代物にも興味を持ってしまう。
短編という制約の中で叙述的なラストの展開は見事。

兵隊カラス

本書で唯一、現実的な舞台。一種の誘拐ものではある。
とはいうものの、雰囲気はどことなく浮遊感があるというか地に足がついていない感じ。
視点が子供ということで、読者とのその差が上手く表現できている。
ラストになりあかされていく真実、子供に降りかかる災難や苦難、不幸な真実などからの子供故の行動の恐ろしさなどが、前述した浮遊感のおかげでうまく小説全体と調和している。

落頭民

落頭民って他でも読んだことある設定だなと思ったら元ネタがあるのか。
ちょっと近いうちに調べてみよう。

この短編はとにかくわからない。
情景がイマイチ想像できなさそうなハチャメチャさなうえ、文章も淀みなく進んで行ってしまい読者を突き放しているような文章なのになんとなくイメージが出来てしまう。
読者からすると、わけのわからない「落頭民」がわけのわからない「蛇遣い」との生活やその後を描き、わけのわからないまま終わってしまうんだけど、どことなくやけに面白い。
気持ち悪いのに面白い。良き良き。

まとめ

個人的には「兵隊カラス」が一番好きなんだけど、一番想像がついたからかもしれない。
「紅き虚空の下で」も、インパクトと思い切りの良さで大好き。
面白かった。

2019年 年間ベスト

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  2. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
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  6. 周木律「眼球堂の殺人」
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  11. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  12. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  13. 高山一実「トラペジウム」
  14. 辻村深月「きのうの影踏み」
  15. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  16. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  17. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  18. 美輪和音「強欲な羊」
  19. 瀬尾まいこ「戸村飯店 青春100連発」
  20. 金原ひとみ「星へ落ちる」
  21. 豊島ミホ「夏が僕を抱く」
  22. よしもとばなな「ハゴロモ」
  23. 河野裕「いなくなれ、群青」
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  25. サキ「サキ短編集」
  26. 中町信「天啓の殺意」
  27. 三浦しをん「小暮荘物語」
  28. 彩坂美月「少女は夏に閉ざされる」
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