西澤保彦「七回死んだ男」

随分昔に読んだのは確か。
なんとなくの話の筋は覚えてる。
前回読んだ時はそんなにハマらなかった気がするけど、今回は結構面白かったな。

ハードルが下がっていたのか、昔よりSFに耐性がついたのか。

本書「七回死んだ男」はSF×ミステリ。
SFやファンタジーとミステリが難しいのは、ルールを作者が決められるってところだと思う。
あまりに作者や物語、探偵役に都合のいいルールだと読者としては冷めてしまう。
本書の「反復落とし穴」のルールはちょっと都合良すぎる部分があるものの、コミカルな雰囲気で許せる。

あらすじ

少女の遺体が住宅街で発見された。捜査上に浮かんだ平凡な家族。一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。
引用:Amazon「七回死んだ男」

ネタバレありの感想

一番のキモである反復回数のズレが、結局キュータローの勘違いだった。というのはなんともかんとも・・・・・・
他にもキュータローが人死に対して気軽すぎる点や、友里さんのセリフから周回が自分の認識とずれていることに全く気づかない点なども気になってしまうが、全体的にはとてもコミカルで面白い。

反復回数のズレというのも、初読の人は気づかない人も多いだろう。
小説としては、どうやっても防げない”殺人事件”でずうっとワクワク読めるし、一人だけ反復を認識している視点人物であるキュータローが日付の認識を間違えている、というのは卑怯と言われても仕方がない力業。
その上、キュータローが”死んで”も反復が続くというのは、読者の思考の外側にあるルールだ。

舞台づくりがとても上手い。
SFのルールはもちろん、キャラクターのやけにコミカルな感じやメタ的な視点を逆手にとったりなど、テクニックもパワーもある。

2019年 年間ベスト

  1. 辻村深月「小説 映画ドラえもん のび太の月面探査記」
  2. 平山夢明「ダイナー」
  3. 紗倉まな「最低。」
  4. 井上真偽「聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた」
  5. 綿矢りさ「憤死」
  6. 周木律「眼球堂の殺人」
  7. 古処誠二「アンノウン」
  8. 江戸川乱歩「パノラマ島奇談」
  9. 壁井ユカコ「サマーサイダー」
  10. 詠坂雄二「インサート・コイン(ズ) 」
  11. 高山一実「トラペジウム」
  12. 朱川湊人「都市伝説セピア」
  13. 桜庭一樹「少女七竈と七人の可愛そうな大人」
  14. 高橋由太「紅き虚空の下で」
  15. 美輪和音「強欲な羊」
  16. 東野圭吾「赤い指」
  17. 西澤保彦「七回死んだ男」
  18. 根本聡一郎「プロパガンダゲーム」
  19. はやみねかおる「そして5人がいなくなる」
  20. 下村敦史「真実の檻」
  21. 河合莞爾「デッドマン」
  22. 小山田浩子「穴」
  23. 北森鴻「共犯マジック」
  24. はやみねかおる「亡霊は夜歩く」
  25. ジェシー・ケラーマン「駄作」
  26. 日高由香「ゴメンナサイ」
  27. 獅子文六「ちんちん電車」
  28. 島田荘司「御手洗潔の挨拶」
  29. 堀内公太郎「スクールカースト殺人教室」
  30. 菅原和也「あなたは嘘を見抜けない」
  31. 松下麻理緒「誤算」
  32. 小杉健太郎「神の子(イエス・キリスト)の密室」
  33. 美輪和音「8番目のマリア」
  34. 藤岡真「ゲッベルスの贈り物」